『いま』の社会、おかしくない? 

いばらき春秋 10/19

管理主義教育の実態を克明に描いた鎌田慧さんのルポルタージュ作品「教育工場の子どもたち」を読んだのは大学生のころだ。徹底して画一化を図る「教育」に背筋が寒くなる思いがした。

福井県の町立中学校で3月、男子生徒が自殺した。町教委は、担任らから繰り返し叱責(しっせき)されたのが原因と結論付ける報告書を公表した。悲惨すぎる出来事だ。

一方的に教員を責め立てるつもりはないが、暴力的な言葉が子どもを追い詰め、命を奪った事実はあまりに重い。校長や他の教員は度を越した「指導」に気付いていたはずだ。何かが起きなければ対応しない組織の病理を感じる。

「ブラック」と頭に付く言葉が増え続ける。「ブラック研修」もその一つ。新入社員に対し怒声を浴びせ続けるらしい。精神を痛めつ、判断力を奪った先には、善悪を考えさせぬ「ロボット化」が待つのか。

25年ほど前のドラマに、金融機関の営業マンが上司から執拗(しつよう)に罵倒される場面が何度も出てきた。今でいう「ブラック企業」の現実かもしれない。

社会からおおらかさが失われつつある。救いはあるか。大手予備校が発行する小冊子の言葉に目が留まった。「『いま』の社会、おかしくない? その気づきが、未来を変える」


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内容
生徒の校内暴力・非行問題、細かな校則の徹底や教師による体罰…。全国的に教育問題が大きく取り上げられた一九八〇年代初めに、「管理教育」を他に先んじて推進していた愛知・千葉などの小中学校のルポ。日の丸・君が代が国旗・国歌として強制され、教育基本法に愛国心が盛り込まれるなど、教育のあり方が大きく変容する現在への黙示録。

愛知・千葉などから全国にひろがった極端な管理主義教育は、教室での子どもたちの自由を奪い、その心を窒息死寸前にまで追い込んでいる。創造的で生きいきとした生活は、どうしたら甦るのか。いじめや子どもの自殺など緊急の課題を考えつつ各地の小中学校をまわって教育の反動化の実態を明らかにする。

目次
「教育工場」の子どもたち
死に至る管理教育
日の丸とコンピュータ
管理と非行
純粋培養の教師たち
校長の闘争
夜間高校に光あれ!


著者について
1938年、青森県弘前市に生まれる。高校を卒業して上京、働きながら、早稲田大学文学部を卒業。鉄鋼新聞社に入り、鉄鋼業界の取材をし、労働現場の実態を知るようになる。勉強と取材のかたわら、ルポルタージュを書きはじめ、のちフリーとなる。著書『死に絶えた風景』(講談社文庫)、『自動車絶望工場』(講談社文庫)、『逃げる民・出稼ぎ労働者』(日本評論社)、『日本の兵器工場』(講談社文庫)、『ビラの精神』(晶文社)、『ぼくが世の中に学んだこと』(筑摩書房)ほか。
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