半分ちょうだい

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有明抄 10/18

 子ども心に悩んだ記憶がある。絵本『はんぶんちょうだい』(作・山下明生)は、森の動物たちが主人公。釣りに出かけたウサギとサルが、何やらとてつもない“大物”を当てる。が、釣り上げられずに「つれたら、はんぶんあげるよ」と、誰彼かまわず約束してしまう。

みんなで釣り上げたものの、獲物はひとつ。口々に「半分ちょうだい」と迫られて、青ざめるウサギとサル…。今の東京都も同じような気持ちかもしれない。江東区と大田区が所有を争ってきた東京湾の人工島「中央防波堤」の話である。

この人工島は、東京五輪でボートやカヌーの競技会場として使われる予定で、まさに都心の一等地。江東区が「島を埋め立てるためのごみはうちを通って運んだ」と主張すれば、大田区は「あの海域では、うちの漁民がノリを養殖していた」と双方譲らない。

結局、東京都が出した調停案は、それぞれの区の海岸線からの距離に基づいて、江東区に面積の9割近くを、大田区に1割余りを認めた。江東区は納得したが、わずかしか得られない大田区は猛反発。争いは司法の場に持ち込まれそうな雲行きだ。

冒頭の絵本では、釣り上げた大物の正体は「海」だった。みんなで担いで山に持ち帰り、森の動物たちの憩いの場にするというハッピーエンド。人工島はどんな結末を迎えるだろう。

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