虫王

越山若水 10/18

「こほろぎの闇こほろぎの貌(かお)うかぶ 金尾梅(かなおうめ)の門(かど)」。コオロギは秋の虫でもいち早く鳴き始める。秋も深まり虫の音が絶えるようになっても、なお鳴き残っている。

福井出身の俳人、皆吉爽雨によると、冒頭の句は「厨(くりや)や土間に入り込んで孤独な声を嗄(か)らしているコオロギ」を詠んでいるという(「日本大歳時記」講談社)。

日本人なら、リーリーリーと澄んだ鳴き声が自然と思い浮かぶ。このような虫の音色を楽しむ文化は欧米にはなく、日本では平安時代に貴族階級で流行したという。

お隣中国にも同様の風習があったが、むしろ「闘蟋(とうしつ)」、コオロギ同士を喧嘩(けんか)させるギャンブルが人気を博した。仕切りを外して対戦し、先にその場を離れた方が負け。優勝すれば「虫王」と称された。

さて日本ではきょうから七十二候の「蟋蟀在戸(しっそくこにあり)」。二十四節気の「寒露」の末候で、晩秋の冷気が増して野原にいた虫も戸口にやって来る時候をいう。

一方、中国では5年に1度の共産党大会が本日開幕する。習近(しゅうきん)平(ぺい)総書記の1期目の成果を総括する重要会議で、長期権力を磐石にする体制を目指す。

「反腐敗」の名目の外敵排除、少数民族の抑圧、言論統制の手法には反発も強い。抗議行動を警戒して北京市内は虫も通さぬ警備態勢だという。まさに「闘蟋」さながら、「虫王」の座を死守する一大事らしい。

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