ロード・レイジ

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19世紀の詩人バイロンはある日、自分の馬車にぶつかりそうになった人をムチで威嚇したという。英国研究家の黒岩徹さんがかつて本紙の評論に書いていた。英米で社会問題化してきた「ロード・レイジ(道路激怒)」がテーマだった。

 運転席に座ると激情に突き動かされる。割り込みや追い抜きの車に腹を立て後方からあおる。時には停止させて暴力をふるう。神奈川県の東名高速で6月、25歳の男が4人家族の乗ったワゴン車をしつように追跡し、追い越し車線に無理やり停止させた。

 そこに大型トラックが追突した。ワゴン車の夫婦が死亡し高校1年と小学6年の娘が軽傷を負った。事故前、男は1・4キロ手前のパーキングエリアで通路に駐車。注意され逆上したという。理不尽な「ロード・レイジ」だ。娘さんの恐怖や両親を奪われた心の傷を思うと胸が痛む。

 日本自動車連盟(JAF)の調査によれば他車にあおられたという人は54%にのぼる。「あおり運転」の罰則は強化されたのに日常茶飯だ。特定の危険運転者の問題にとどまらない。胸に手を当てれば程度の差こそあれ遅い車にいら立った経験はあろう。

 大型車のプロ運転手は立腹やいら立ちをどう制御しているか。国際交通安全学会の聞き取り調査がある。例えば割り込みに対して。目の前の空間を自分のものではなく公共のものと考えれば『どうぞお入りください』とゆとりを持てる―。あおりあおられる車社会を変えるマナーの一つだ。

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