ポケットに名言を

河北春秋 10/17

弘前市出身の奇才、寺山修司の著書に『ポケットに名言を』がある。学生時代、文庫本をいつもジーパンの後ろポケットに入れて読んだ。Tシャツのような本だった。もしもあの本が単行本なら、果たしてあれほど強い印象を受けたかどうか。

文庫本は実に重宝する。A6判サイズだからかさばらない。通勤電車内なら、立ったままでも手軽に読め、コンパクトなのでさっとバッグに入れられる。おまけに廉価。中古本で買ったり、レンタルや図書館で借りたりもできる。

今、文庫本が売れない時代を迎えている。国内市場は毎年5%以上縮小。この危機的事態を文芸春秋の社長は図書館のせいだとみる。社にとって収益全体の30%強を占める柱で、「市場低迷は版元にも作家にとっても命取りになりかねない」と訴える。

社長は先頃出席した全国図書館大会で「できれば(文庫の貸し出しを)やめていただきたい」と呼び掛け、物議を醸した。一方、図書館側は「利用者の声もあり、置かないというのは難しい」と対応したが…。

図書館の文庫の貸出数は、出版社側の調べによると、多い所で4分の1に達するという。この数字をどう読めばいいのか、もっと議論が必要だろう。気軽に「ポケットに名著を」。読者としては、そうお願いするしかできない。

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寺山修司『ポケットに名言を』

印象的な言葉

・人生を支配するのは幸運であり、英知にあらざるなり。 ―キケロ

・憂鬱は凪いだ熱情に他ならない。 ―アンドレ・ジイド『地上の糧』

・われわれは苦しむ以上に恐れるのである。 ―アラン『幸福論』

・奴隷ははじめは正義を求めているが最後には王国を要求する ―アルベール・カミュ『反抗的人間』

・ああ、復活の前に死があるね。 ―ロマン・ロラン

・君にはこんな経験はないか。つまり、自分のしなくてはならないことが何かあるのがわかっていて、しかしそれが何なのかはっきりつかめない。そんな経験はないかい。おれにわかるのは、何かをしなくてはならないのだということで、それが何なのかよくわからない。時がくればわかるだろうが、おれは本物をつかむまでやるんだ。 ―ジェームス・ディーン

・地上的な希望はとことんまで打ちのめされねばならぬ。そのときだけ人は真の希望で自分自身を救うことができる。―カフカ『城』

・ある状況においての幻想を捨てたいという願いは、幻想を必要とする状況を捨てたいという願いである。 ―カール・マルクス

・いまぼくがひたすら望んでいることは―存在すること(to be)なのだ。どうか忘れないでほしいが、この不定詞は中国語では「他動詞」なんだよ。 ―ヘンリー・ミラー『南回帰線』
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