ヒグマ

談話室 10/17

北海道を旅していた寅さんは歩いて山越えをする。向かう養老牛(ようろうし)温泉の旅館は中標(なかしべ)津(つ)町の山あいにある。釧路で知り合ったヒロイン風子(ふうこ)の結婚式に間に合うように急ぐが、山中でヒグマと遭遇し、やぶの中を逃げ回る。

映画「男はつらいよ」の第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」(1984年)の最終シーンである。寅さんは命からがらたどり着き、ウエディングドレス姿の風子に迎えられ、人心地がつく。だが、自分の雪駄(せつた)がヒグマにかまれて半分になっているのに気付き、気を失ってしまう。

ヒグマによる人の被害が後を絶たない。道内で記録がある62年4月以降、今年9月までに狩猟者を除き死者51人、負傷者87人に上る。本州はツキノワグマによる被害が相次ぐ。今年に入って県内で15日現在、人身被害は3件、目撃件数は過去2番目に多い441件を数える。

キノコ採りシーズンは冬眠前のクマが活発に餌を探す時季と重なる。2010年以降の県内の人身被害は月別で10月が最も多い。「クマから見れば、森林は自分の領分。人は侵入者」と県は注意を促す。旅行かばんを手に雪駄履きはなかろうが、入山者は教訓を生かしたい。

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第33作 (昭和59年8月 公開)
男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 Like

初夏の釧路で、根無し草の風子(中原理恵)に、かつての自分の姿を見た寅さんは、彼女を道連れに旅をする。根室で叔母の世話で理容室につとめることになり、落ち着いたかのように見えた風子だったが、旅回りのサーカス一座のオートバイ乗り・トニー(渡瀬恒彦)に惹かれてまた旅暮らしとなる。柴又に帰って来た寅さんに届いた報せは、風子が病床についているという話だった…
 寅さんが渡世人として、同じ渡世人のトニーと渡り合う。これまでのシリーズでは描かれなかった、寅さんが生きる世界が垣間見える。冒頭 盛岡で、かつての舎弟・登(秋野太作)と再会し、渡世人稼業のわびしさを知った寅さんが、風子にだけは幸せになって欲しいと願うが、トニー、風子、寅さんの関係は、いずれも放浪者の孤独をにおわせている。渡瀬恒彦の持つ不良性と、中原理恵演じる風子の危うさを、釧路の夏を象徴する霧笛のイメージが彩る。風子と寅さんと共に、逃げた女房を訪ねる旅をする中年男・福田栄作に佐藤B作。
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