風切り鎌

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 忘れられた年中行事・風切り鎌
   

二百十日(にひゃくとうか)、9月1日は立春から数えて210日目にあたります。この日、大風が来る方向に鎌を立て風除けの行事を行います。今では見られなくなってしまいましたが記憶を辿りかかげました。
 「どうか、台風が来ないように、着たら切っちゃうぞ」そんな気持ちになりました。この頃から田んぼの稲穂が頭(こうべ)をたれ始めます。大切な稲が倒れては収穫に影響もしますし倒れた稲を刈るのには大変です。
 会社から帰り、急いで立てたところ、犬の散歩でAさんが通りました。相当ビックリされ、「どうして・・・」とたずねられました。「なるほど怖いな、風の神様もこれでは怖くて来れないだろう」そう思いました。
 昔の人たちは多分、そんな願いを持ちながら「風切り鎌」を立てたのだろうと思います。
 「備えあれば憂いなし」とか、災害に備えもう一度、避難ルートや懐中電灯等、家族で検討しておくのも良いと思います。


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中日春秋 9/17
 
先日、大型ハリケーン「イルマ」が米国を襲った際、ハリケーンに向けて銃を発砲しようという呼びかけが広がり、当局が絶対にやめてと訴える騒ぎがあった。ハリケーンへの恨み、ストレスも分からぬではないが、詮ない上に危険極まりない。銃社会の歪(ゆが)みを見る思いである。

この話に日本に残る風習を連想する。「風切り鎌」という。屋根や竹ざおの先に鎌をくくりつけて立てる。鎌で風を切って退治するというまじないである。

風におびえ、「風切り鎌」にすがりたい人もいるか。「解散風」のかすかな音が聞こえる人には聞こえるらしい。二十八日召集の臨時国会の会期中、首相が衆院解散・総選挙に打って出るのではという現段階では当てにできぬ観測がある。

北朝鮮の動きを考えれば、選挙どころではなかろうし、解散に値する大義も名分も今はうかがえない。それでも、党利党略だけで、状況を考えた場合、政権支持率が回復に向かい、離党者相次ぐ、民進党が低迷する中、ここが好機と映るらしい。不穏な見立てが永田町のススキを揺らす。

「九月つごもり、十月のころ、空うち曇りて、風のいと騒がしく吹きて、黄なる葉どものほろほろとこぼれ落つる、いとあはれなり」。「枕草子」だが、与党の一部は、「黄なる葉」が野党に見えるのか

大義なき解散となれば世間の「鎌」がどちらに向くかは分かるまいて。


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[枕草子]

190段

風は嵐。三月ばかりの夕暮れにゆるく吹きたる雨風(あまかぜ)。

八、九月ばかりに、雨にまじりて吹きたる風、いとあはれなり。雨の脚横さまに、騒がしう吹きたるに、夏とほしたる綿衣(わたぎぬ)のかかりたるを、生絹(すずし)の単衣(ひとえぎぬ)重ねて着たるも、いとをかし。この生絹だに、いと所狭く暑かはしく、取り捨てまほしかりしに、いつのほどにかくなりぬるにかと思ふも、をかし。

暁に、格子(こうし)、妻戸(つまど)を押しあけたれば、嵐のさと顔にしみたるこそ、いみじくをかしけれ。

九月つごもり、十月のころ、空うち曇りて、風のいと騒がしく吹きて、黄なる葉どものほろほろとこぼれ落つる、いとあはれなり。桜の葉、椋(むく)の葉こそ、いととくは落つれ。

十月ばかりに、木立多かる所の庭は、いとめでたし。
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[現代語訳]

190段

風は嵐。三月頃の夕暮れに、ゆるく吹いた雨風。

八~九月の頃に、雨混じりに吹いた風は、とてもしみじみとした趣きがある。雨脚が横殴りに、騒がしい感じで風の吹いている時、夏を通して使った綿入れの衣が掛かっているのを、生絹(すずし)の単衣に重ねて着たのも、とても面白い。この生絹の単衣だって、とても大げさで暑苦しく、脱ぎ捨ててしまいたいほどだったのに、いつの間にこんなに涼しくなったのかと思うのも、面白い。

明け方に、格子や妻戸を押しあけたところ、嵐がさっと冷たく顔に沁みたのは、とてもしみじみとした風情を感じさせた。

九月の末、十月の頃、空が曇って、風がひどく騒がしく吹いて、黄色くなった木の葉がはらはらと散って落ちるのは、とても哀れな情感を誘う。桜の葉、椋(むく)の葉は特に、早々と散ってしまう。

十月頃に、木立の多い家の庭は、とても素晴らしい。

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