親の欲目

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内容紹介
「あいのり」から「わんこそば」まで、1155項目 食す人も、打つ人も、必携!
蕎麦の歴史と文化、調理法、栄養、習俗、諺、隠語、方言――あらゆる知見を集成した決定版<読む事典>

故・司馬遼太郎が「よき江戸時代人の末裔」と称賛した市井の研究者によって体系化された、「蕎麦」に関する膨大な知見。江戸時代の文芸や大衆文化に登場する蕎麦、全国各地に根付いたさまざまな食し方、植物としてのソバと製粉の過程、蕎麦打ちの用語、そば店の隠語、蕎麦をめぐる史跡・習俗・諺など、あらゆる資料を博捜し、探究した1155項目。

そば店の屋号に多い「庵」とは?
隠語で「筏」「抜き」「山入り」「りんだ」とは?
蕎麦のことわざ「慳貪屋の冷や飯」「紺屋の明後日 蕎麦屋の只今」「蕎麦種三角 絵描きは五岳」「蕎麦で首をくくる」とは?
「コロッケ蕎麦」「カレー南蛮」の登場はいつ、どこで?
新潟の「蕎麦犬」、長野の「蠅蕎麦」、山形の「板蕎麦」、高知の「蕎麦すべり」とは?
そば店の「通し言葉」で、「かけまじり七枚もり」「きんで願います」「岡で天ぷら」とは?

※本書の原本は、1999年、柴田書店より刊行されました。

内容(「BOOK」データベースより)
故・司馬遼太郎が「よき江戸時代人の末裔」と称賛した市井の研究者によって体系化された、「蕎麦」に関する膨大な知見。江戸時代の文芸や大衆文化に登場する蕎麦、全国各地に根付いたさまざまな食し方、植物としてのソバと製粉の過程、蕎麦打ちの用語、そば店の隠語、蕎麦をめぐる史跡・習俗・諺など、あらゆる資料を博捜し、探究した一一五五項目。

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「親ばかちゃんりん、そば屋の風鈴」

そば屋の風鈴と親ばかの関係、そのカギは夜鳴きそば屋にアリ。
「親ばかちゃんりん」という言葉を時々耳にしますが、これは「親ばかちゃんりん、そば屋の風鈴」と続くきまり文句で、盲目的に子供をかわいがる親の様子を揶揄した言葉。ではなぜ「親ばか」=「そば屋の風鈴」なのでしょう。屋台のそば屋がたくさん登場した江戸の頃、衛生的でタネモノを加えたそば屋がかけそば一辺倒で不衛生な「夜鷹そば」と混同されぬよう屋台の四隅に風鈴をぶらさげ「風鈴そば」として売り出しました。季節はずれに冬でも鳴っているこの風鈴のとんちんかんな様子が親ばかと同じであると表現されたのです。ちなみに当時、風鈴そばは売り声なしに風鈴の音だけでお客を集めていました。騒音などとは無縁な静かな時代に響きわたるそば屋の清新な風鈴の音・・・現代によみがえって欲しいものの一つであります。

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中日春秋 8/23

「あたりき車力車引き」「言わぬが花の吉野山」「見上げたもんだよ屋根屋のふんどし」。言葉遊びの「無駄口」。一種の語呂合わせで、何かの一言に語呂の良い言葉を加え、おもしろさや威勢の良さをまぶす。映画の寅さんがよく使っていたが、最近はあまり聞かれない。

「親ばかちゃんりんそば屋の風鈴」。親の欲目や過保護を冷やかす、この無駄口はまだ使われている方だろう。『蕎麦の事典』によると宝暦(一七五一~六四年)ごろ、江戸の町に屋台に風鈴をぶら下げたそば屋が登場したとあるが、これとの関係か。

「親ばか」も控えめな風鈴の音ほどなら笑いの種にもなる。されど、ここまでくると親ばかの親とばかの順をあべこべにしたくもなる。山梨県山梨市の職員不正採用事件である。

中学校長が自分の息子を市役所に採用してもらおうと当時の市長(収賄容疑で逮捕)に現金八十万円を渡したとして贈賄の容疑で逮捕された。

子どもを等しく扱うべき立場を忘れ、わが子ばかりはと裏口採用を頼む校長とそれを請け負う市長。古い社会派ドラマも顔を赤らめる展開である。これが二十一世紀の日本とは、頭を抱える。

いたたまれないのは採用された息子だろう。息子の将来を心配したのかもしれないが、とどのつまりが息子を傷つけている。その「あたりき」がなぜ分からなかったか。風鈴の音が寂しく聞こえる。

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【地口:付け足し言葉】

●字典
あたりき車力よ車引き(あたりき しゃりきよ くるまひき)=「あたりまえ」の職人言葉で、車力と続けて、それは車曳き者のことだと説明合わせ。
蟻が鯛なら芋虫ゃ鯨(ありがたいなら いもむしゃくじら)=「ありがたい」の「あり」を蟻に、「たい」を鯛にかけたしゃれ。この後に「百足(むかで)汽車なら蠅(はえ)が鳥」と続く。「蟻が十なら芋虫や二十、蛇は二十五で嫁に行く」と同形の交ぜっ返しも。
いやじゃ有馬の水天宮(いやじゃありまの すいてんぐう)=「いやじゃありませんか」+「有馬の水天宮」(江戸の水天宮は久留米藩主有馬家の藩邸内にあった)
嘘を築地の御門跡(うそをつきじの ごもんせき)=「うそをつく」+「築地門跡 (「築地の御門跡」は築地本願寺のこと)
裏山椎の木山椒の木(うらやましいのき さんしょのき)=うらやましいという言葉遊び。
恐れ入谷の鬼子母人(おそれいりやの きしぼじん)=「恐れ入りやした」の「いりや」を地名の「入谷」に掛け、同地にある「鬼子母神」と続けたもの。「恐れ入りました」をしゃれていう語。
おっと合点承知之助(おっとがってん しょうちのすけ) =合点だ、承知した、という語を二つ重ねて人名のようにしたごろ合わせのしゃれ。
驚き桃の木山椒の木(おどろき もものき さんしょのき) =「驚き」の「き」に「木」をかけた語呂(ごろ)合わせ。たいそう驚いたの意。
その手は桑名の焼き蛤(そのてはくわなの やきはまぐり)=「その手は喰わない」+「桑名の(名物の)焼き蛤」。いくらうまいことを言っても、そんなことぐらいではひっかからないということ。
何か用か九日十日(なにかようか ここのかとうか)=何か用か?と七日八日をもじったもの。
びっくり下谷の広徳寺 (びっくりしたやの こうとくじ) =広徳寺は、もともと上野下谷にあって、その壮大さから「びっくりした」の表現言葉(現在は練馬区桜台に移転)
何だ神田の大明神(なんだかんだの だいみょうじん) =何だ「かんだ」と神田をもじって後は神田にある稲荷神社の名前を付けたした。
会いに北野の天満宮(あいにきたのの てんまんぐう)= 会いに「来たの」と「北野」+「天満宮」
とんだ所へ北村大膳(とんだところへ きたむらだいぜん)=「とんだ所へ来た」の「きた」に「北村」の「きた」を掛けて続けた言葉遊び。
とんだ目に太田道灌(とんだめに おおたどうかん)=「とんだ目に遭うた」の「おうた」に「太田」を掛けて続けた言葉遊び。
腹が空いて北山時雨(はらがすいて きたやましぐれ)=「北」を「来た」に掛けて、腹が空いてきたことをいう洒落。

●有名な文句をもじったもの
「舌切り雀」をもじって、「着たきり娘」
「いずくも同じ秋の夕暮れ」をもじって「水汲む親父秋の夕暮れ」
「お前百までわしゃ九十九まで」をもじって「お前掃くまでわしゃ屑熊手」
「しづ心無く花の散るらむ」をもじって「しづ心無く髪の散るらむ」
「沖の暗いのに白帆が見える」をもじって「年の若いのに白髪が見える」

●韻を踏むことによってリズムをつけるだけで、特に意味のないもの
あたりき車力、けつの穴ブリキ
嘘を筑紫(つくし)」
美味かった(馬勝った)、牛負けた
美味しかった(大石勝った)、吉良負けた
驚き桃の木山椒(さんしょ)の木
お茶の子さいさい河童の屁
おっかさんの落下傘
いないないばあさん
すいませんねん 亀は万年
ちんぷんかんぷん猫の糞
敵もさるもの引っ掻くもの
結構毛だらけ猫灰だらけ、けつのまわりは糞だらけ→映画「男はつらいよ」の寅さんの的屋のセリフ(啖呵売)で有名。
何か用か(七日八日)九日十日
日光、結構、もう結構
言わぬが花の吉野山
参ったさん、成田山
真っ平御免素麺冷や素麺
見上げたもんだよ屋根屋のふんどし
大したもんだよマレーシア→タイの南(下)にマレーシアが位置しているため。
I'm sorry ヒゲソリー、髭を剃るならカミソリー
何のこっちゃ、抹茶に紅茶
草加、越谷、千住の先よ
願ったり叶ったり、晴れたり曇ったり
しまったしまった島倉千代子
まいったまいった舞の海

●掛詞の技法を使い、後に意味のない言葉をつなげたもの。
すみま千円(「すみません」+「千円」)
あたり前田のクラッカー(「当たり前だ」+「前田のクラッカー」)
そうはいかのキンタマ(「そうは行かない」+「烏賊の金玉」) 何がなんきん唐茄子かぼちゃ(なにがなんきん とうなすかぼちゃ)
どうぞかなえて暮の鐘(「どうぞかなえてくれ」+「暮の鐘」)
そうで有馬の水天宮(「そうであります」+「有馬の水天宮」)
申し訳有馬温泉(「申し訳ありません」+「有馬温泉」)
田へしたもんだ蛙のしょんべん( 皮肉として、大したもんだ、蛙のしょんべん程度の価値だ)
アメリカンフットバース(「アメリカンフットボール」+「吹っ飛ばす」)

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江戸っ子の会話はまず駄洒落から
隣近所の人とも、初めて会う人とも、江戸の庶民は、まず駄洒落で打ち解け、笑顔からコミュニケーションが始まります。江戸っ子は、言葉に対する鋭い感覚を持っていて、地口(じぐち)、もじり、無駄口など、言葉遊びの達人です。例えば、「ありがたい」といわれれば、「蟻が鯛なら芋虫ゃ鯨」と切り返し、「ありがとう」には「蟻が十なら、芋虫ゃ二十歳」と、即座にまぜっ返す。喧嘩などで「その手は汚ねぇぞ」とくれば、「北がなけれゃ日本は三角」といい返す。揚げ足取りに過ぎませんが、ふっと和んでいくんですね。
用件のみを伝える会話を切り口上といって嫌い、少しでも楽しい会話を心がけます。諸国万人の吹き溜まりの江戸では、異郷の者同士が、初顔合わせをする機会が毎日あるわけです。薩摩の人が隣に引っ越してきたり、お向かいには会津の人だったりします。だからこそ、和やかに過ごすためには「笑い」が秘薬となるのです。笑いは、「他意がございません」という意思表示でもあります。その点、無口な人や無愛想な人は用心した方がいいと敬遠されます。
江戸っ子好みはカラッとした快活なユーモア。相手をバカにしたり、皮肉ったり、自分を卑下するような笑いは下品とされ、嫌われます。上等な笑いとは、スコーンと突き抜けた、茶の笑い。お茶目、茶化す、茶々を入れるなどの「茶」です。緊張をふっと抜く笑いが人付き合いを円満にしました。
「お江戸風流さんぽ道」 杉浦日向子編著 世界文化社 

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フーテンの寅さんの自己紹介

「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
わたくし、不思議な縁もちまして、生まれ故郷にわらじをぬぎました。
あんたさんと御同様、東京の空の下、ネオンきらめき、
ジャンズ高鳴る花の都に、仮の住まい まかりあります。
故あって、わたくし、親分子分持ちません。」


「労働者諸君!稼ぐに追いつく貧乏なし、か?
結構、結構、結構毛だらけ、ネコ灰だらけ
尻(しり)の周りはクソだらけ、か!」

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がってん音頭



おっと おっと おっと おっと
がってん がってん がってん がってん

しょうちのすけくん おどりましょ
おどろき もものき さんしょのき
あたりき しゃりきよ くるまひき

なにが なんきん とうなす かぼちゃ
おそれいりやの きしぼじん

おっと おっと おっと おっと
がってん がってん がってん がってん

おどろき もものき さんしょのき
あたりき しゃりきよ くるまひき

ありがたいなら いもむしゃくじら
こまり いりまめ さんしょみそ

おっと おっと おっと おっと
がってん がってん がってん がってん

なにか ようか ここのか とおか
けっこうけだらけ ねこはいだらけ
こまった こうやく はりばがねえ

おどろき もものき さんしょのき
あたりき しゃりきよ くるまひき

とんでも はっぷん あるいて じゅっぷん
うそをつきじの ごもんぜき

おっと おっと おっと おっと
がってん がってん がってん がってん
おっと おっと おっと おっと
がってん がってん がってん がってん

しょうちのすけくん おどりましょ……
 つけたし言葉とは、本来の言葉の後に、調子を合わせたり、語呂を合わせたりした言葉を付け足したもの。私の子供の頃にはよく使われていました。最近ではとんと聞きませんね。「オヤジギャグ」のように扱われ、使うことが躊躇されているのでしょうか? ところがところが、子供は美しい言葉にとても敏感で、この番組を通じて一種の「付け足し言葉」ブームのようになっています。今の子供たちが大人になったときには、はやり言葉になっているかもしれませんね。


1 おっと がってん しょうちのすけ(おっと合点承知之助)

2 おどろき もものき さんしょのき(驚き桃の木山椒の木)

3 あたりき しゃりきよ くるまひき(あたりき車力よ車曳き)

4 なにが なんきん とうなす かぼちゃ(何がなんきん唐茄子かぼちゃ)

5 おそれいりやの きしぼじん(恐れ入谷の鬼子母神)

6 ありがたいなら いもむしゃくじら(蟻が鯛なら芋虫ゃ鯨)

7 こまり いりまめ さんしょみそ(困り煎り豆山椒味噌)

8 なにか ようか ここのか とおか(何か用か九日十日)

9 けっこうけだらけ ねこはいだらけ(結構毛だらけ猫灰だらけ)

10 こまった こうやく はりばがねえ(困った膏薬貼り場がねえ)

11 とんでも はっぷん あるいて じゅっぷん(とんでもはっぷん歩いて十分)

12 うそをつきじの ごもんぜき(嘘を築地の御門跡)

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