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殸 ケイ・キョウ・セイ  殳部         
解字 甲骨文は、吊るした石板をバチでたたいて鳴らしている形。篆文と楷書は、「声(つるした石板)+殳(たたく)」の会意。石の板を紐でぶら下げ、バチでたたいて音を出すさまで、石の楽器を表わす。磬ケイ(うちいし)の原字。
意味 (1)楽器の一種。石の楽器。(=謦) (2)石の楽器の音。こえ。(=聲)

イメージ   「たたいて音をだす」 (磬・声・謦)
        たたいて出た音が 「つたわる」 (馨)
音の変化  ケイ:磬・謦・馨  セイ:声
たたいて音をだす

磬 ケイ  石部
解字 「石(いし)+殸(たたいて音をだす)」 の会意形声。殸はもともと石板をたたいて音をだす形。そこに石をつけてもとの意味を強調した字。打って音を出す石の楽器をいう。
意味 (1)打ち石。 (2)「へ」の字形の中国古代の打楽器。「磬鐘ケイショウ」(磬とつりがね)「磬声ケイセイ」(磬を打つ音)「編磬ヘンケイ」(磬をいくつも連ねて編成した楽器) (3)身体を楽器の磬のように折り曲げて礼をする。「磬折ケイセツ」

声[聲] セイ・ショウ・こえ・こわ  士部
解字 旧字は聲で 「耳(みみ)+殸(たたいて音をだす)」 の会意。たたいて出る音を耳で聞くさま。転じて、耳をうつ音響や音声をいう。新字体の声は、旧字の上部左にある「声(つるした石板)」の字を取り出して「聲」に代えたもの。
意味 (1)こえ(声)。人のこえ。また音・ひびき。「音声オンセイ」「声域セイイキ」「声紋セイモン」 (2)こえを出す。言う。述べる。「声明セイメイ」「声援セイエン」「声色こわいろ」(音声の調子や口調) (3)うわさ。評判。「声望セイボウ」(名声と人望)

謦 ケイ・キョウ・しわぶき  言部
解字 「言(ことば)+殸(たたいて音をだす)」 の会意形声。たたいて出したような音を言葉で発すること。
意味 しわぶき(謦)。せきばらい。軽いせき。「謦咳ケイガイ」(せきばらい。また、笑ったり語ったりすること)
つたわる

馨 ケイ・かおる・かおり  香部
解字 「香(かおり)+殸(つたわる)」の会意形声。伝わってくる香り。
意味 (1)かおる(馨)。かおり(馨り)。かぐわしい。「馨香ケイコウ」(遠くまで漂う香り) (2)良い評判

                
…………………………

中日春秋 7/16

【声】の異体字の【聲】。耳という字の上に配置されているのは石で作った楽器の意味だそうだ。神を呼ぶために打ち鳴らしたものと考えられている。だとすれば【聲】という漢字は音だけでは成立せぬ。その音を聞く人間の耳があってはじめて【聲】として認識されるのかもしれぬ。

その十九歳の男性は障害によって会話がほとんどできなかったそうだ。埼玉県上尾市の障害者施設の送迎ワゴン車の中に約六時間取り残され、熱中症で亡くなった。エアコンを切った七月の車内の暑さと残酷な時間を想像する。どれほど苦しかったことか。

障害によって助けを求められなかった可能性がある。けれどもである。その男性は心の中で「助けて」という音を大きく打ち鳴らしていたはずである。

聞こえぬ声に気づく機会はあっただろう。朝に提出されるはずの連絡帳が出ていない。昼食は手付かずのまま残っている。その状況のひとつひとつは「ぼくはここにいない」と知らせる声である。叫びである。不在に気づいた職員もいたが、情報は共有されぬままで捜すことも家族に連絡することもなかった。

捜査による真相解明を待つが、どこへいったのだろうと男性の身を案じる心という耳を澄ませば、ちゃんと聞こえる「助けて」の【聲】ではなかったか。

「純粋で素直で、いつもにこにこしている人」だったそうだ。事故がくやしい。
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