金句

越山若水 7/15

古いことわざや格言には、先人の知恵や社会の真実が含まれている。多くの人々の経験が集約され、普遍性を備えている。昔の言葉だからと軽んじてはいけない。

早速に一つ紹介しよう。「よい主人は、智慧(ちえ)ある者を使い、健気(けなげ)な者を使い、欲に耽(ふけ)る者をも使い、愚痴(ぐち)なる者をも捨てずして、それぞれの用に応じて使うぞ」

16世紀の末、九州天草でイエズス会が刊行した「金句集」に所収の言葉。人間には必ず取りえがあり、才能に応じて配置すれば持ち味を発揮するという教訓である。

つまり人の上に立つ「よい主人」とは、飛び切りの優れた人材ばかりを欲するのでなく、いろんな人間を適性に応じて生かす力量が必要だと諭している。この金言をぜひとも差し上げたい人物がいる。

「富山で生まれた人は極力採りません」「閉鎖的な考え方が非常に強い」―。総合機械メーカー、不二越の本間博夫会長である。富山市内の中間決算発表でそう言い放った。

富山は同社の創業地。しかしロボットを核にした事業拡大に向け、近く本社を東京に一本化。「優秀な人材を全国、世界から集めたい」考えのようだ。

激烈なグローバル化を視野に入れての発言だろうが、出身地差別や富山県民侮辱とのそしりも免れず、経営トップとは思えない軽率さ。「よい主人は…」。先人から伝承された金句をジックリと吟味してはいかが。
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