安西愛子

中日春秋 7/10

占領期の日本のラジオ番組は連合国軍総司令部(GHQ)の影響力が強く、CIE(民間情報教育局)の検閲は無論、番組の企画や演出にまで介入していた。

その結果、米国の番組の焼き直しが増える。一九四七年放送開始のバラエティー「日曜娯楽版」(NHKラジオ)の元は、米国の「サンデー・セレナーデ」

まだうまい訳の方で日本語にした結果、おかしな番組名になるケースもあった。「ザ・シンギング・レディー」は歌と童話の朗読などによる幼児向けの米国番組。三〇、四〇年代に全米で人気となったが、日本で焼き直され、こんな番組名となった。「うたのおばさん」(四九年放送開始、NHKラジオ)。当世、大きな声では言いにくい。

おばさんの一人、歌手の安西愛子さんが亡くなった。百歳。「めだかの学校」「かわいいかくれんぼ」「ぞうさん」。その歌声を耳にしたことはなくとも、番組で発表された童謡の数々には、どの世代にもなじみがある。

放送開始当時、安西さんは三十二歳。おばさんに抵抗があったか。それでも番組側には十年、二十年続いた場合、「おねえさん」ではむしろ、おかしくなるという判断があった。戦争で傷ついた子どもの心に良い歌を十年、二十年と届ける。番組名は決意の表れといえるだろう。

番組は実際十五年続いた。これもまた戦後復興期の物語。そして歌い継がれる。






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