一番いいおにぎり

正平調 7/8

合宿中のことである。おにぎりの昼食になった。みんなが競って手を伸ばす。ボール集めで遅れた1年生が食べようとしたら、形の崩れたものしか残っていないと知って、監督は怒った。

「1年生はボール拾いをしてくれたんだぞ」。練習は中止になり、夜までミーティングが続いた。「最後に一番いい形のおにぎりが残る野球部を目指そう」。懇々と諭した監督の話に、上級生は涙を浮かべた。

監督とは、東京都立高校の社会科教諭で、野球部を指導した故佐藤道輔さんである。著書「甲子園の心を求めて」を熟読した高校野球関係者は多い。名だたる何人もの野球部監督が教えを請うたとも記事で読んだ。

おにぎりの話は日本高野連理事の田名部和裕さんがこの春、僚紙デイリースポーツのコラムで書いていた。全員で戦うとはこういうことかと、心に染み込んだ。情熱と指導力で、赴任した都立4校すべてをシード校に育てたというから、これはうなる。

甲子園を目指す高校野球兵庫大会が今日から始まる。さらに県中学総体、全国高校総体へと、中学生、高校生の汗が光る季節だ。

どんな競技であれ、勝ち負けが最大の関心事だろう。その一方で、仲間を思って一番いいおにぎりが最後に残る光景をいくつも見たい季節でもある。


20170708182526563.jpeg



関連記事