ヒアリを断つ

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 子どものころ、南予の祖母の家で見たアリ撃退法にびっくりした。食卓のスイカに向かう行列を見つけると祖母は、包丁を持ち出しスイカの横に置いた。「これで逃げていなくなる」

 列は崩れ、散り散りになった。だが専門家に聞くと「効果なし」。体内から分泌し地面につけた道しるべ役のフェロモンが障害物によって遮られ混乱するだけ。やがて別ルートで餌に向かうからだ。迷信の類いだが、当時は包丁に恐れをなしたと信じ込んでいた。

 こちらのアリはのんきに逃げるのを待つ時間はない。南米原産で強力な毒を持つヒアリが国内で初めて確認された。尻の針で刺されると、やけどのように激しく痛み、アレルギー反応によって命を落とすことがあるというから、ぞっとする。

 中国から貨物船のコンテナに紛れ込んでやって来たらしい。物流のグローバル化で外来生物の侵入を防ぎきれないのが実情。ヒアリは北米やアジアに生息域を拡大し米国では年間100人が犠牲になっている。農作物を食い荒らし、電柱の変圧器に入り停電を引き起こすなど、猛威を振るう。

 大阪港、神戸港では女王アリが発見された。爆発的な繁殖力を持つだけに初動の対応が肝心だ。初期の駆除を徹底して分布拡大を防いだニュージーランドに学びたい。

日本には天敵がおらず、定着すれば生態系に影響を与えかねない。「アリの穴から堤も崩れる」の例えもある。決して侮ってはならない。
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