異常気象の「日常化」

水や空 7/7

 夏の夜空に美しく輝くさまを、逢(おう)瀬(せ)に心浮き立つ2人に重ねたのだろう。天の川を挟んで織り姫星(琴座のベガ)、ひこ星(わし座のアルタイル)がひときわよく見えるのが旧暦の7月7日ごろという。

願い事を短冊にしたためて、七夕の天気は? 今年の2人は?-と見上げるはずの空なのに、これを非情と呼ばずに何と呼ぼう。福岡、大分両県を襲った記録的な大雨の爪痕の深さに言葉を失う。

定義を引いてみる。「これまでに経験したことがないような大雨により、命に関わる重大な災害の危険性が高まっているとき」に出される。それが大雨特別警報である。

福岡、大分がこの警報に覆われたとき、気象庁の人が言っていた。「重大な危険が差し迫った異常事態です」。経験したことがない、命に関わる、差し迫った異常事態...。やたらと見聞きするはずのない、そうだとおかしいはずの言葉になじんでしまった気がするのは、あながち錯覚とも言い難かろう。

「異常気象の日常化」などという穏やかならぬ修辞が浮かぶ。壱岐市では「50年に一度の大雨」が降った。これもまた近年、幾度となく見聞きした言葉。

経験のない異常事態にさらされた地に、少しでも早く、いつも通りの夜が、眠りが、戻ってくれますよう。非情の空を仰ぎ、願うのはそれに尽きよう。

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