「読書 月『0冊』33%」

小社会 7/6

 「読書 月『0冊』33%」。先般、日本世論調査会の調査結果を見て驚いた。漫画と雑誌を除いた本を1カ月に読む冊数が0冊の人が33%と、3人に1人の割合に上るという。

 「0冊」の原因を聞くと、73%の人が「スマートフォンやゲームなどに費やす時間が増えた」。同じ「紙と活字」の世界に籍を置く者として、昨今の「出版不況」は人ごとではない。

 何度か浮き沈みがあった昭和の出版界で、初期の「出版ブーム」に貢献した1人に「銭形平次捕物控」の作者野村胡堂がいる。犯罪を筋としつつも、平次と恋女房のお静、慌て者のガラッ八を軸に、江戸庶民の生活を明るく健康的に描いた。平次の連載は四半世紀に及ぶ。

 胡堂の妻と親しい女性があって、就学前の男の子を連れて野村家によく遊びに来た。その子の名が井深大(まさる)。戦後に仲間の盛田昭夫と小さな会社を興し、ソニーに育て上げたのはご存じの通り。

 前身の会社は、社員5人の零細企業で金策もままならない。そのとき井深は「銭形平次」の印税で潤っていた胡堂を頼った。野村夫妻は井深の借金の申し出に快く応じた(大村彦次郎「時代小説盛衰史」)。

 夫妻は増資のたびにソニー株を井深のために買い、晩年、家が貧しく学業を放棄しなければならない青少年のために財団を創設した。出版業界の富が作家をへて社会貢献にまでつながる。そんな夢物語のような時代は、もう来ないのだろうか。


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・内容
中里介山「大菩薩峠」から司馬遼太郎の登場まで。五十年にわたる時代小説の栄枯盛衰を、豊富なエピソードと独特の記述で描ききった一千枚の力作!作品を超える作者の人間的魅力、名作が生まれるまでの意外なプロセス、挿画家の大きな役割、編集者の苦労…名作、傑作を生み出したさまざまな話が静かに心を動かす好著。

・目次
野間清治が『講談倶楽部』を創刊する
「講談師問題」が起こる
都新聞社の雑報記者たち
伊藤みはると平山蘆江
大逆事件と中里介山
「大菩薩峠」の連載が始まる
岡本綺堂と「半七捕物帳」
演芸記者の長谷川伸
報知の逸材野村胡堂
川柳作者吉川雉子郎〔ほか〕
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