欠点でなく個性

滴一滴 7/3

「自閉症の人は素直です。正直すぎて、時に苦労するが、いいじゃないですか。それは欠点というより個性ですよ」。講演でそう語っていたことを思い出す。優しい語りに救われ、教えられた人は多かろう。

先日、81歳で亡くなった児童精神科医の佐々木正美さんである。「子どもへのまなざし」など多くの育児書で知られ、自閉症をはじめ発達障害の支援に尽力した。川崎医療福祉大(倉敷市)の教授を長く務め、岡山との縁は深い。障害のある子どもの保護者らも指導した。

力を入れたのは、障害の特性を理解して当事者が暮らしやすくする「TEACCH(ティーチ)」という支援だ。予期しないことへの不安が強ければ事前に予定を示す。話し言葉が伝わりにくい場合は、絵や文字のカードで補うというものだ。

35年前に米国の大学で知り、日本に伝えた。家族の悩みを理解できた背景には、それまで試行錯誤した自身の経験もあったろう。

弱点は受け入れ、長所を伸ばす。そのために環境を整える。そうした考えは、障害への合理的な配慮を求めた障害者差別解消法(昨年施行)にも通じる。

鹿児島県の空港で先月、車いすの男性がタラップの階段をはって上らされるなど、社会の配慮はいまだ十分とは言えない。大切なのは、障害を理解する姿勢だ。「欠点でなく個性」とした佐々木さんに学びたい。
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