諭吉と貧困


卓上四季 6/29

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」。福沢諭吉の「学問のすゝめ」の有名な一節だ。平等主義の主張と理解する人が多いが、実は意味合いは少々異なる。

文章はこんなふうに続く。<人は生まれながらの貴賤(きせん)の別はないが、いつの間にか仕事や身分に差ができる。それは、学問をしたかどうかの違いだ>。どことなく現代の子どもの貧困と重なる。

厚生労働省の調査で、子どもの7人に1人が貧困家庭で暮らしていることが分かった。特にひとり親世帯は2人に1人と、主要国中最悪レベルだ。

やっかいなのは、貧困が次世代に連鎖することだろう。家庭の貧困のために十分な教育が受けられない。それによって生じる学力差が学歴の差となり、就職にまで影響する。非正規雇用や低就業率が収入の差として表れ、再び貧困を生む。

連鎖を断ち切るためにも、教育の無償化や学習支援、親を含めた生活支援など、あらゆる対策を検討しなければならない。財源の問題はある。だが、貧困を放置すれば15歳までの子どもたち全体の生涯所得は減り、国の財政収入が16兆円減少するとの試算も示されている。

これが、増税などの形で国民にのしかかることもあり得る。若者もお年寄りも無関係ではない。だからこそ、子どもを社会全体で支える仕組みを考えたい。学ぶ環境の違いによって「人の上」や「人の下」をつくらないように。
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