政治家は、曲芸師である

中日春秋 6/24

 「政治家は、曲芸師である」と喝破したのは、十九世紀から二十世紀にかけてフランスの政界と文壇で活躍したモーリス・バレスである。「政治家は、実際にやることとは逆のことを言って、バランスをとるのだ」

わが国の首相も、この手の曲芸の腕はかなりのものだろう。共謀罪への異論も獣医学部新設での疑惑も封じ込めるかのように国会を閉会して、会見で口にした言葉は「政府として分かりやすく説明していく」。だが、野党が臨時国会の召集を求めても、応じる気配はない。

憲法は臨時国会について、<いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない>と定める。

「召集の期限は書かれていない」と釈明するのかもしれないが、自民党の憲法改正草案では、この条文に、こんな一節が付け加えられている。<要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない>

なぜ、期限を切るようにしたのか。自民党は「憲法改正草案Q&A」できちんと説明している。<党内議論の中では、「少数会派の乱用が心配ではないか」との意見もありましたが、「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である」という意見が、大勢でした>

そんな見識もドロンと消えた。曲芸だけでなく、手品も得意らしい。


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