「六か七」の壁

中日春秋 6/22

豪放磊落(ごうほうらいらく)な人柄で多くの人を魅了した囲碁棋士・藤沢秀行さんと、将棋棋士の芹沢博文さんが、こんな話をしたことがあったという。我々は囲碁や将棋をどれほど分かっているのか。神様が百としたら、どの程度か

二人で紙に数字を書いて見せ合ったら、答えが一致した。わずか六か七。藤沢さんは書いている。「碁打ちを五十年もやっていながら、何も分かっていない。ボウ然とするばかりだ。しかし失望はしていない。奥が深く、変化が広大無辺だからこそ、我々は強くなれる」(『勝負と芸』)

それが今や囲碁や将棋でトップ棋士たちが人工知能(AI)に勝てない時代となった。AIが百としてさて我々は…と問わねばならぬ時代となったのだから、それこそボウ然となる。

だが、そんなコンピューターの力を使い、飛躍的に力を伸ばした棋士もいる。十四歳で将棋の公式戦最多連勝記録に並んだ藤井聡太四段だ。「人間では思いつかない手を指すソフト」との対局で、既成観念にとらわれぬ一手を追い求めているそうだ。

囲碁の世界最強棋士の一人・中国の古力九段はAIについて、こう評している。「囲碁の神秘的な一つの門を開けてくれた。人類とAIは、碁の世界の大きな幕を開けるよう共に探究している。新たな革命が進んでいる」

藤井四段は連勝記録だけでなく、「六か七」の壁を破ってくれるだろう。


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藤沢秀行のプロフィール

人生、意気に感ず 藤沢秀行
藤沢秀行(ふじさわ ひでゆきorしゅうこう/1925年6月14日-2009年5月8日/男性)は、神奈川県横浜市出身の囲碁棋士(名誉棋聖)。本名は「藤沢 保」(-たもつ)。名人、天元、王座など、数々のタイトルを獲得した名棋士であり、碁界最高のタイトルである「棋聖」の六連覇などを果たした。現役引退も若手の指導に情熱を傾け、多くのトッププロを育成。また、若き頃より書の道にも励み、個展なども開催していた。

著書

主な著書に『人生、意気に感ず/ごま書房新社』『藤沢秀行 囲碁教室シリーズ/つちや書店』『野垂れ死に/新潮社』『勝負と芸 わが囲碁の道/岩波書店』『人生の大局をどう読むか/三笠書房』『置碁-白の作戦(解説)/山海堂』『故事・格言による囲碁上達の手ほどき/東京書店』『戦いはこれからだ 人間的魅力の研究/祥伝社』などがある。

藤沢秀行の名言集

人間は最終的には
自分の判断で
行動しなければ
ならないのだから

結果については
自分で責任を
とるしかない。

だから私は
失敗も修羅場も
恐れない。

人間、どんな仕事に
たずさわろうと

一生のうちに
一度や二度は
かならず痛い目に遭う。

そのとき、自分の力が
足りなかったのだと
あっさり割り切って
いっそう仕事に
励むのもよし。

二度とこんな悔しさは
ごめんだと
発奮するのもよし。

一番いけないのは
いつまでも負け惜しみを
ぐだぐだ言うだけで

ショックから
立ち直れないことである。

努力を怠れば
進歩が止まるばかりでなく
かならず退歩する。

自分がどんなに努力しても
すぐに結果が出る
とは限らない

結果にこだわりすぎると
安全な道を選び、
進歩は止まってしまう。

試合が勝負ではない。
毎日の積み重ねが
勝負なのだ。

若いうちは
わき目もふらずに
精進しろ。

目先の勝負に
こだわるな。

三連勝すれば
三連敗もありうるのが
人生だ。

努力というのは
報われるまでが
なかなかたいへんだが

いったん怠ると
その影響はてきめんに
出てくるから恐ろしい。

“定石”どおりの人生を生きて
何がおもしろいのか

(定石…最善とされる手順)

定石は相手が
定石どおりに打ってくれれば
互角になる。

が、相手がそのとおり
打ってくれるとは限らない。

定石なんか知らない人は
平気で定石にない手を
打ってくる。

強い人は相手を
混乱させるために
わざと定石はずしの手を
打つこともある。

それで負けたからといって
定石のせいではない。

要するに”自分流”を
持っていないから
“応用”がきかないのである。

最悪の状態で
戦えなければ
男ではない。

相手の不運を
期待した瞬間に
運は逃げていく。

これだと思った考えを
表現できる場がなくなったら

人生は如何にも
わびしいものになる。

わからないことを
わかっていれば一人前。

ヘボは、自分が未熟だ
ということをわかってない。

人間は、
死にたくても
死にきれないのだ。

だとしたら
生きているうちは
最善を尽くす
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