父の日

天地人 6/17

 母親の起源は古く、何億年もさかのぼれるが、父親の歴史はたかだか数百万年。河合雅雄「サルの目 ヒトの目」(平凡社)は社会や家族についての考察で、そんなことを述べている。米国の学者は「父親は人類による発明品」と言っているそうだ。

 同書によると、母親は、自分の肉体から子どもを分離するという、生物学的な次元を基礎にしている。それに対して、父親はあくまで社会的存在。そのため、父親のあり方は、社会のあり方によって、どうとでも変わりうるという。

 難しげな話になったが、父親の存在、イメージが変化してきたのは確かだろう。戦後、家族制度の解体とともに家父長の座が瓦解(がかい)し、父親の座は根なし草のようになった-同書はそんな指摘もする。

 発明品、根なし草…なんだか父親の足元がぐらつくようだ。あすは、その父親に感謝を表す「父の日」。米国の女性が、父の墓にバラの花をささげたことに由来する。現在は食事、お酒や衣服のプレゼントなど感謝の表し方はさまざまある。

 ただ、日本生命保険の調べでは、父の日にプレゼントを贈る人は4割ちょっとしかいないらしい。プレゼントを催促するのも気がひける。お父さんたちはあまり期待せず、この日を迎えたほうがいいのかも。「三省堂新現代川柳必携」にこんな句があった。<おずおずと父の日がまたやってきた>あきたじゅん。


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サル学の第一人者がヒトの社会をじっくり観察、さまざまな動物のエピソードを交えながら、教育・環境・国際問題など人類ひいては地球全体を悩ます諸問題に鋭く切り込む、快心のエッセイ集。

目次

動物の社会 人間の社会
秋の日のけもの歩き-自然と文化のあいだ
ガキどもの行方-教と育のあいだ
サルの道 ヒトの道
一枚の葉書


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