真夏の風物詩

談話室 6/14

家の前を流れる用水堰(ぜき)で幼少の頃にドジョウを捕ったのが、魚との最初の出会いという。鶴岡市の加茂水族館長を半世紀近く務めた村上龍男さん。今もシニアアドバイザーとして水族館と関わり、講演や執筆に忙しい。

かつての本紙連載記事をまとめた村上さん著「山形の魚類たち」(1984年)は、海水魚だけでなく淡水魚にも紙幅を割く。自身の子ども時代は、田圃(たんぼ)に水を引く堰などで夜に点々と灯をともしナマズを捕るのが「初夏の風物詩」のようだったと、懐かしんで書いていた。

イワナやヤマメ、フナにコイ、メダカなど、村上さんが執筆した35年ほど前でさえ身近な生き物が激減していたことがうかがえる。近年では、平野部の整備された農業用水路で魚影を探すのは至難の業だが、それでも減農薬や有機栽培が広がり生態系が戻りつつあると聞く。

村上さんがクラゲを売りに、閉館寸前から業績をV字回復させた加茂水族館は、リニューアルから丸3年で入館者200万人と好調だ。館内にはクラゲ以外の県内の水生生物も多数飼育されているが、ナマズやメダカが水槽の中でなく身近にいた、あの時代も取り戻したい。
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