完食から見えること

金口木舌 6/9

「完食」という言葉をよく耳にするが、割と新しい言葉らしい。テレビ番組の大食い選手権などで大量の料理を食べ切ることを司会者がそう表現したことから、一般的になった。

数年前、「小学校でクラス全員が1年間給食を完食した」という記事について、社内で少し議論したことがある。児童の頑張る姿を伝えようと掲載しているが、少し引っ掛かることもあった。

議論では「そもそも、自分の食事を全部食べたという話を、紙面で紹介する必要があるのか」「体調や食べられる量などに個人差がある。全員完食という形に問題はないか」との意見が出た。

現場の教師に聞くと「家で好きな時に好きなものを食べ、基本的な食事の習慣ができていない児童もいる。特に低学年の児童に、時間内に食べてもらうのに苦労している」との答えが返ってきた。

「全員完食」に取り組むのも、目標を持たせる方法の一つとのこと。一方、食べ物が手に入らない時代があったことや、世界中で飢えに苦しむ子どもがいる現実、食べ物の大切さを伝える難しさもある、という話もあった。

クラスに、1日の食事を給食だけに頼っている子がいる可能性もある。飽食の時代と言われるが、「完食」から見える問題は多様で重い。食べることは生きること。学校任せにするのではなく、社会全体で真剣に向き合わなければならない。

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学校あるある「給食を全部食べるまで昼休みナシ!」は「体罰」なのではないか?

「いただきます」のあいさつと同時に、もりもりと給食を平らげ、校庭へと一目散に駆け出していく児童たち。そんな彼らを横目に見ながら、給食が食べられないばかりに、昼休み中ずっとうつむいて過ごさなければならない児童もいる。

先生から「給食を全部食べ終わるまで、昼休みナシ!」を告げられてしまったからだ。小学校時代、こんな経験をしたことがある人もいるのではないか。

もし自分がそんな立場に置かれたとしたら、どうだろうか。楽しそうに遊ぶ友だちの声を聞きながら、苦手な食べ物とのにらみ合いをさせられたら、残るのは嫌な思いばかりだ。教師の厳しい声と友達に取り残された焦りが、食べられない給食の臭い、色、形と一緒になって脳裏に刻み込まれる……。

たまたま苦手な食べ物が給食で出たことを理由に、そんな「懲罰的」な仕打ちを受けなければならないのだろうか。「食べるまで座っていろ」というのも、ある種の体罰と言えるのではないだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●食べ終わるまで座らせても「体罰」ではない
「文科省の考え方によれば、体罰とは『当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する』とされています。

つまり、体罰か否かの明確な線引きはなく、ここであげたような事情を考慮しながら、ケースバイケースで判断せざるを得ないことになります」

足立弁護士はこのように前提を述べたうえで、「給食を食べない児童に対して、たとえば無理矢理口に押し込むとか、はき出した物を食べさせるといった指導は、体罰と評価されるでしょう」と指摘する。

しかし、今回の例は「体罰にならない」という考えだ。それはなぜだろうか。

「指導の対象となっているのは、心身が未発達の小学生です。さらに、学校給食は完食することを前提に栄養を考えられています。

また、完食するまで給食が終わっていないと解釈して、児童をその場に残すという手法自体は、場所的・時間的にも、態様としても、著しく不当とはいえません」

●嫌いなものを無理やり食べさせても、むしろ悪影響
それでは、「食べ終わるまで座らせ続ける」という指導は妥当なのだろうか。足立弁護士は次のように結論づけた。

「体罰ではないからと言って、これが適切な指導かと言われれば、答えは『ノー』だと思います。

好き嫌いは学校教育だけで解決するものではなく家庭での食育との連携が必要です。また、嫌いなものを無理矢理食べさせたとしても、ますます嫌悪感が強くなるだけでむしろ悪影響です。

『好き嫌いをなくす』という目的と指導方法(手段)がマッチしておらず、指導として不適切でしょう」

なお、学校給食法は「学校生活を豊かにし、明るい社交性および協同の精神を養うこと」を目標に含めている。現場での指導は一筋縄ではいかないとは思うが、こうした理念に近づけるような工夫を、先生たちにはお願いしたい。

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学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例

 本紙は、学校現場の参考に資するよう、具体の事例について、通常、どのように判断されうるかを示したものである。本紙は飽くまで参考として、事例を簡潔に示して整理したものであるが、個別の事案が体罰に該当するか等を判断するに当たっては、本通知2(1)の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。


(1)体罰(通常、体罰と判断されると考えられる行為)
○ 身体に対する侵害を内容とするもの
 ・ 体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。
 ・ 帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛ばして転倒させる。
 ・ 授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。
 ・ 立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につかせる。
 ・ 生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩(たた)く。
 ・ 給食の時間、ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したが聞かなかったため、持っていたボールペンを投げつけ、生徒に当てる。
 ・ 部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該生徒の頬を殴打する。

 ○ 被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの
 ・ 放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。
 ・ 別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない。
 ・ 宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。

(2)認められる懲戒(通常、懲戒権の範囲内と判断されると考えられる行為)(ただし肉体的苦痛を伴わないものに限る。)
 ※ 学校教育法施行規則に定める退学・停学・訓告以外で認められると考えられるものの例 
・ 放課後等に教室に残留させる。
 ・ 授業中、教室内に起立させる。
 ・ 学習課題や清掃活動を課す。
 ・ 学校当番を多く割り当てる。
 ・ 立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる。
・ 練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させる。

(3)正当な行為(通常、正当防衛、正当行為と判断されると考えられる行為)
 ○ 児童生徒から教員等に対する暴力行為に対して、教員等が防衛のためにやむを得ずした有形力の行使
 ・ 児童が教員の指導に反抗して教員の足を蹴ったため、児童の背後に回り、体をきつく押さえる。
 ○ 他の児童生徒に被害を及ぼすような暴力行為に対して、これを制止したり、目前の危険を回避するためにやむを得ずした有形力の行使
 ・ 休み時間に廊下で、他の児童を押さえつけて殴るという行為に及んだ児童がいたため、この児童の両肩をつかんで引き離す。
 ・ 全校集会中に、大声を出して集会を妨げる行為があった生徒を冷静にさせ、別の場所で指導するため、別の場所に移るよう指導したが、なおも大声を出し続けて抵抗したため、生徒の腕を手で引っ張って移動させる。
 ・ 他の生徒をからかっていた生徒を指導しようとしたところ、当該生徒が教員に暴言を吐きつばを吐いて逃げ出そうとしたため、生徒が落ち着くまでの数分間、肩を両手でつかんで壁へ押しつけ、制止させる。
 ・ 試合中に相手チームの選手とトラブルになり、殴りかかろうとする生徒を、押さえつけて制止させる。

以上
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