プルト君

卓上四季 6/9

かつて日本の原子力PR用ビデオが、米国政府から抗議を受けたことがある。高速増殖原型炉もんじゅを開発していた旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が制作した「頼れる仲間プルト君」

「プルトニウムは水と一緒に飲み込まれても、ほとんど吸収されず、体の外に出てしまう」。そんな説明が入り、子どもがプルトニウム入りの水を飲み干す場面が流れる。

原子力大国の米国も、さすがに行き過ぎと感じたのだろう。エネルギー省長官が「誤った認識を持たせる」とビデオの回収を求めた。国内でも批判を受け廃盤となったが、一部はインターネットで見ることができる。

発がん性が指摘される放射性物質を、あたかも危険性がないかのような印象を持たせる神経は信じ難い。この一件で反省し、少しは安全意識が高まるかと思っていたが、そうではなかった。

動燃の後身である日本原子力研究開発機構で作業員がプルトニウムを吸い込んだ。1人は国内では過去に例がない量という。健康被害が出るかもしれず、被ばくされた方の胸中は察するに余りある。保管状況を確認中の事故というが、顔全体を覆いもせず、手作業をさせていたのには驚くばかりだ。

プルトニウムの名は、ローマ神話の「冥界の王」に由来する冥王星から取ったのは有名な話である。扱い方を誤ればエネルギー源になるどころか、暗闇で牙をむく猛獣そのものになる。

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