混沌

中日春秋 6/3

旧約聖書の創世記をめぐる、こんなジョークがある。三人の男が言い争っている。医者と建築家と政治家が、自分たちの職業のうち最古の職業はどれかを論じているのだ。

「神はアダムの肋骨(ろっこつ)からイブを作られた。これは手術ではないか」と医者が主張すると、建築家が反論する。「神はまず、混沌(こんとん)からこの世界を構築された。建築こそ一番古い」。「なるほど」と政治家が口を開いた。「ところで、その混沌をつくったのは誰だね?」

「誰だね?」と聞かれて、いま真っ先にその顔が浮かぶ政治家が、またしても特大の混沌をつくった。地球温暖化対策の世界的な枠組み「パリ協定」から離脱すると宣言したのだ。

「地球温暖化は金のかかるでっち上げ」とまで言っていた人物が米国の大統領になったのだから、生まれるべくして生まれた混沌だろうが、思い起こしたいのは、地球温暖化問題などで米欧が対立した主要国首脳会議の後に、メルケル独首相が語った言葉だ。

「私たちが他の人(国)に頼り切る時代は過ぎ去りつつある。自分たちの将来のために自分自身で闘わなくてはならないことを、私たちは知るべきだ」

実際に当の米国でも、大企業の首脳や地方政治家らが「政府に頼らずに自分たちで温暖化対策を進めていこう」と声を上げ始めている。トランプ氏がつくった混沌から、新たな動きが生まれつつあるのか。


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天地創造  旧約聖書の創世記によると、神は次のように天地を創造した。

第1日
はじめに神は天と地を創造した
地は何もない真っ暗な世界だった。神が「光あれ」と言うと光ができた。神は光と暗黒とを分け、光を昼、暗黒を夜と呼んだ。

第2日 神は大空を創った
水の間に大空を造り、上の水(雨)と下の水(海)とに分けた。大空を天と呼んだ。

第3日 海と大地を創り、大地に草と樹を芽生えさせた
「地の水は1つに集まり、乾いた所が現われよ」と言った。乾いた所を"地"、水の所を"海"と呼んだ。「地は草と樹を芽生えさせよ」と言うと、草と樹が芽生えた。

第4日 太陽と月と星を創った
神は太陽と月と星を創り、太陽に昼を、月に夜を司らせた。そしてそれらを天に配置し地上に光が届くようにした。

第5日 動物と鳥を創った
神はそれらを祝福して言った。「産めよ、増えよ、水や地に満ちよ」

第6日 地の獣、家畜、土に這う全てのものを創った
神は自分を象って男と女を創造した。神は人を祝福して言った。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせ、全ての生き物を支配せよ」

第7日 こうして天地万物は完成した
神は仕事を離れて安息した。神は第7の日を祝福しこれを聖別した。



【安息日 Sabbath】 ヘブライ語で休みのこと。週の7日目の日で金曜の日没に始まり、土曜の日没に終わる。キリスト教ではイエスが復活した日曜日、イスラム教ではムハンマドがメッカを脱出した金曜日。

【モーセ五書】 旧約聖書の中の創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の5つでモーゼが書いたといわれる。ユダヤ教では、律法の書(トーラー:Torah)と呼ばれる聖典。

【旧約聖書】 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖典

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アダムとイヴ
(Adam & Eva)
 神は天地を創造し、6日目に自分をかたどって土で人を造った。また、アダムの肋骨から女を造った。男の名はアダム、女の名はイヴ。ヘブライ語では土をアダマ、命をエバという。二人はエ デンの園で暮らしていた。神は「この園にある全ての樹の実を食べても良いが、善悪の知識の木の実だけは決して食べてはならない」と言った。

 ある日、エデンの園を歩いていたイヴは、蛇にそそのかされて禁断の木の実(善悪の知識の木の実)を食べてしまった。イヴはアダムにも食べさせた。すると、2人は自分たちが裸であることに気づき、恥ずかしさのあまり体をイチジクの葉で隠した。

 神は約束を守らなかった罪(原罪)により、二人を楽園から追放し(失楽園)、蛇を地を這う動物とした。女には産みの苦しみが与えられ、苦労して地を耕さなければ食料を得ることができなくなった。
【リンゴ】 古くから「知恵、豊饒、美」のシンボルとして神話や伝説に登場する。 日本人がイメージする禁断の果実は、赤いリンゴ。ヨーロッパでは青リンゴ。イブが食べたリンゴは、聖書には木の実としか記されていない。後世、リンゴが美味しくてかわいいことからリンゴとされた。 ホメロスの叙事詩イリアスでは、黄金のリンゴを巡る3人の女神の争いからトロイ戦争に発展する。
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