ワトソン

中日春秋 5/31

英語の「ワイズマン(WISE MAN)」は「賢人」。では「ワイズガイ(WISE GUY)」は? 正反対の「知ったかぶり」の意味になる

ほぼ同じ言葉なのに、なぜこれほど意味が異なるのか。その人工知能(AI)システムの開発でまず、苦しんだのは言葉の問題だった。人の使う矛盾もある自然言語をどう理解させるか。

恋する女性がお相手に「バカ」とささやいてもそれはバカの意味ではない。その手の言葉を教えるとしたらと空想する。その高い壁を乗り越え、完成したのがIBMの「ワトソン」。二〇一一年、クイズ番組のチャンピオンを打ち倒し一躍有名に。最近は医療分野でも成果を上げると聞く。

「ワトソン」に新しい仕事である。ソフトバンクが新卒採用の選考にその頭脳を借りることにした。「ワトソン」に応募者のエントリーシートを判定させるというから最初のふるいである。

さまざまな辞書や文学作品、新聞記事、ウェブページなど約二億ページ分のデータを集積するAIに手抜かりはあるまい。えこひいきもない。作業も大幅に短縮される。

時代とはいえ、ひっかかるのはそれが就職という人生の分かれ目に使われること。若者が祈りを込めて書いたシートを最初に見るのが人ではなくAI。古いやつだとお思いでしょうが、大切な何かが失われていないか。賢人、ワトソンよ。君はどう思う。


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 ソフトバンクは29日、来年4月に入社する新卒の総合職採用者の選考に人工知能(AI)を使うと発表した。志望者がインターネットを通じて提出するエントリーシートにある二つの設問への回答のうち、一つを日本IBMのAI「ワトソン」が採点する。IBMによると、企業が採用活動にワトソンを使うと公表するのは初めてという。

 AIが採点するのは、昨年12月から受け付けているエントリーシートのうち、5月中旬以降に提出されたもの。約400人が対象とみられる。設問は記述式で、昨年12月以降に人間がつけた高い評価や低い評価約1500人分を学習させ、AIが3段階で評価する。

 AIが「低い」と評価した回答は、人間が改めて評価する。もう1問はAIを使わず担当者が評価する。エントリーシートによる選考の合否は2問の評価を合わせて決めるため、AIの評価だけで不合格になることはないという。合格者は一般教養などの適性検査に進む。書類選考の合格率は明らかにしていない。

 質問は、ソフトバンクが重視する「ナンバーワン」「挑戦」など五つの理念を示した上で、「五つのうちあなたの強みに合致する項目と、強みを発揮したエピソード」を問う内容。AIは瞬時に文章を分析し、評価を出す。AIを使うことで、この質問の評価にかかる時間を4分の1に短縮できるという。

 同社は「複数の人事担当者による評価のずれを防ぐ効果もある」として今後、2問ともAIに評価させることも検討する。
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