人間の将棋

鳴潮 5/27

 将棋の対局で独創的な手を指して相手を翻弄(ほんろう)する。それは、羽生善治3冠ら才能ある棋士の専売特許だった。「新手一生」とは故升田幸三実力制第4代名人のモットーだ。定跡破りの指し手に一生をかけた姿は世の共感を呼んだ
 
 ところが、今では人工知能が人間の考えつかない手を連発して、プロ棋士を打ち破る。ついに、将棋界トップの佐藤天彦名人がコンピューターソフト「PONANZA」に2番勝負で完敗した
 
 ソフトの指し手は縦横無尽で正確無比。将棋はまだまだ進歩する可能性を持っていると、人間に教えているようでもある。折しも佐藤名人は名人戦7番勝負のさなか。人間対人間の勝負が色あせないでもない
 
 ソフトにかなわない将棋界の未来はどうなるのか。そんな不安を吹き飛ばしそうなのが、14歳の最年少プロ棋士、藤井聡太四段の大活躍だ。公式戦19連勝中。実力派棋士を一方的に攻め倒すこともある鋭い着想が持ち味である
 
 プロ資格を得る四段昇格を決めた奨励会三段リーグの成績は13勝5敗。プロ入り後の快進撃が、急速な伸びを物語る。昨年12月のデビュー戦で下したのは、くしくも、”元祖最年少棋士“で最年長の加藤一二三・九段だった
 
 藤井四段の出現は、天の配剤なのか。独創的な将棋で「人間の将棋ここにあり」と、満天下に示してもらいたい。


…………………………
四季風 5/27

子ども時代に将棋の面白みを知ったが、長じてからは「マッタ」連発のなれ合い将棋ばかりで上達とは無縁だった。19連勝の中学生棋士・藤井聡太四段の活躍は、彼の将棋に対する純粋な姿勢や勝負に賭ける執念が伝わり、たくましさを感じる。

その折、将棋界で最も権威のある名人が将棋ソフトに完敗。囲碁ソフトは世界最強とされる中国人棋士に勝ち越した。チェスやオセロを含む全てのボードゲームで人間が敗北する結果となった。

「人間の直感力はコンピューターに勝る」とチェスの名人は負け惜しみを言ったそうだが、人工知能(AI)研究者によると、膨大な情報からAIが自ら学習し、判断能力を高める深層学習という技術に強さの秘密がある。その手法で人間の直感力も数式化されつつあるという。

将棋や囲碁には定石がある。将棋の名人は「自分の手順が分からなかった」と嘆いた。AIが定石を超えた一手を常に生み出しているのであれば、人間の勝ち目はなくなるばかり。

現代の人間世界のありようは、学習能力を失ったかのように本来の定石が通用しないことが多い。いっそのこと人間の将来をAIの直感力に委ねることも新たな一手なのかもしれない。
関連記事