忘れられた人々

中日春秋 5/27

「忘れられた人々」という言葉を使って、変革の理念を語ったのは、フランクリン・ルーズベルトである。大恐慌に米国民があえぎ続けていたとき、大統領の座を目指していた彼は一九三二年春の演説で、「経済的なピラミッドの底辺にいる忘れられた人々」のための政治を説いた。

大統領となった彼は矢継ぎ早に政策を打ち出した。大型公共事業で雇用を生み出し、労働者の権利や最低賃金を保障し、「忘れられた人々」の力を復活の原動力にした。

この歴史的重みのある言葉を大統領選の勝利演説で使ったのが、トランプ氏だ。半年前、彼は上気した顔で宣言した。「忘れられた男たち女たちが忘れ去られることはもはやないだろう」

そんな言葉を忘れたのかどうか。このほど発表された「予算教書」では、国防費の増額などが盛り込まれる一方で、貧しい人たちへの支援は大幅に削減する構えである。

一九三〇年代には、政治に使い捨てにされた人々の思いを代弁したこういう歌があったという。<私の忘れられた人を覚えていますか…/彼を戦場に送り出したのはあなただ/「万歳!」とあなたは叫んだ/それなのに今の彼を見てみよ!>(シュレーズ著『アメリカ大恐慌』)

失業などにあえぎ、既存の政治への憤りから、トランプ氏に投票した「忘れられた人々」も、「私たちを見てみよ」と叫び始めるかもしれぬ。

201705270551262c9.jpeg

20170527055128491.jpeg
関連記事