かわら版

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有明抄 5/23

心中や敵討ちに火事、災害-。江戸時代、庶民の興味を引いた情報だ。娯楽からニュースまで、「知りたい」という欲望はいつの世も変わらない。核心を読みたいと思わせる口上で売った江戸期の「かわら版」。新聞の号外のようなものだった。

「読売(よみうり)」「絵草紙(えぞうし)」「一枚摺(ずり)」と呼ばれた印刷物である。ただ幕府は政治批判や言論活動の活発化を恐れ、禁圧した。そうなると知りたいのが人の常で、追及を逃れるため作者不明で出回ることに。

さて、こちらも今のところは出所が分かっていないものだが、表に出て物議を醸している。内閣府が文部科学省に、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を促したとされる文書である。「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っている」-。中にはそんな記述があり、国会で火種に。

新設に慎重だった文科省が急に軟化したのはなぜか。学園理事長は首相の「腹心の友」とされ、またも官僚の「忖度(そんたく)」が働いたのでは、と野党が問いただす。文科大臣は「文書の存在は確認できなかった」というが、職員の個人パソコンは調べていない。もやもやは残ったままだ

かわら版は庶民の知りたいこと、知らなければならないことを伝えてくれた。くだんの文書だって真偽のほどは無論のこと、核心を知らされないままでは国民は納得しまい。
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