切り取り犯

卓上四季 5/19

19世紀後半、英国ロンドンで5人の女性が次々に襲われる事件があった。のどを切られ、臓器をえぐられる―。残忍な手口は共通していた。

ジャックを名乗る犯行文が通信社に届き、「切り裂きジャック事件」と呼ばれた。容疑者には犯行の手口から医師や肉屋が浮上したが、犯人は捕まらず、迷宮入りした。

時代は大英帝国の絶頂期。海外で植民地支配が進む一方、国内では貧富の差が深刻になる。庶民は憂さ晴らしもあって、この事件に関心を寄せ、報道する新聞を先を争って購入した。今でいえば劇場型犯罪に当たる。

犯人は単なる変質者なのか。時代背景との関わりはないのか。今も真相を探る著作の出版が絶えない。節目の年には、特集番組や関連商品の販売もある。事件から130年たつ来年は、どうなるだろう。

国内に目を向けると、人をあやめたわけではないが、思い出という大切な心の財産をずたずたに切り裂くような出来事が相次ぐ。各地の図書館で所蔵の学校史や記念誌が切り取られる被害である。主に生徒の集合写真や学校行事の様子を撮影した写真が狙われているというから、愉快犯だけではくくれない。学校生活に恨みがあったのかもしれない。

広範囲にわたるため模倣犯がいる可能性がある。むろん、切り取りは殺人とは違う。でも、そこに怖さを感じるのは、心の闇がゆがんだ形で表に出ているように見えるからか。

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【切り取り被害】図書館で広がる学校史・記念誌切り取り被害 全国で250冊2千ページ超 目的不明、模倣も?

 図書館が所蔵する学校史や記念誌が切り取られる被害が、中部地方を中心に全国で相次いで発覚している。

 11日には群馬、山梨両県の図書館も、関東地方で初めて同様の被害を公表した。公立図書館の8割が加盟する日本図書館協会(東京)は緊急調査の実施を決定。写真掲載ページに被害が集中するなど共通点はあるものの、目的が見えないだけに、関係者らに不安が広がっている。

 一連の被害は、岐阜県図書館(岐阜市)で、毎月最終金曜日に行われている蔵書整理がきっかけで発覚した。

 4月28日に作業を行っていた職員が、ある学校の記念誌を閉じた状態で見たところ、途中のページが抜き取られているような隙間が空いているのを発見。ページをめくると数十ページが切り取られていた。これを受け所蔵する県内の小中高校の学校史、記念誌など計462冊を調査した結果、10冊から計134ページが切り取られていることが分かった。

 保管されていた郷土資料コーナーでは、1週間ほど前から本の並び順の乱れが目立っていたという。別の職員は「学校史、記念誌も後世に残すべき貴重な資料。誰が何の目的でやったのか全く見当が付かない」と戸惑った様子だった。

 岐阜県図書館での被害発覚後、同県内や近隣県の図書館も調査を実施。岐阜市立中央図書館(岐阜市)や愛知県図書館(名古屋市)などで次々と被害が見つかり、11日現在で被害が確認された学校史、記念誌は250冊以上、ページ数は2千ページ以上に達した。当初は中部地方が中心だったが、秋田、群馬、静岡、香川などでも被害が確認された。

 切り取られた部分は、集合写真や学校生活の様子など写真をメインにしたページが比較的多く、刃物で切り取ったり、手で破ったりしたような形跡があるという。各図書館では、閲覧に申請が必要な場所に学校史や記念誌を移したり、警察に被害届を出したりするといった対応を行っている。

 切り取り行為の目的について、筑波大の原田隆之教授(犯罪心理学)は「同一人物が複数カ所で切り取ったとすれば、自身の学校生活や学校教育に対するネガティブな感情に基づいた暗い攻撃性の表れではないか」と分析する一方、「被害地域に広がりがあるため、ネットなどを介してつながった複数の人物によるいたずらや模倣犯も考えられる」と話している。

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