ウエルシュ菌

滴一滴 5/19

 前の晩に残ったカレーが翌朝にも出る。向田邦子さんが脚本を書いた往年の人気テレビドラマ「寺内貫太郎一家」にはそんな家族の食卓が描かれていた。

向田さん本人もカレーが好物で、子どものころ、前夜のカレーの残りを朝食のご飯にかけたいと親にねだったそうだ。「子どもは前の日のカレーを食べたいわけですよ」。生前の対談で語っている。

特に昭和の時代に子どもだった人には、似たような思い出があるに違いない。鍋のカレーがたくさん残ると、しばらくは食べられるのがうれしかった。一晩寝かせれば味もよくなった気がしたものだ。

作り置きしたカレーなどが食中毒の原因になるとして、厚生労働省が注意を呼び掛けている。今年3月には都内の私立幼稚園で、園児や教職員ら70人以上が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えた。園の行事で出たカレーを食べたのが原因とみられる。カレーは前日に調理し、室内に置いていた。

悪さをするのはウエルシュ菌という細菌だ。いったん加熱されると熱に強くなり、常温で放置すると急速に増殖する。再加熱しても菌が生き残る場合があるという。

カレーを保存するにはできるだけ早く冷ますことが大事らしい。面倒でも小分けし、冷蔵か冷凍する。2日目のカレーが好きだった向田さんが健在なら、現代の食卓の風景をどう描くだろうか。

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