温泉

四季風 5/16

これから行く温泉を調べたら「単純泉」とあった、何だ単純温泉か-などと失望するなかれ。むしろ喜んだほうがいい。いったい誰が「単純泉」などという愚かな名称を考えたのか。

温泉表示は特定成分が基準値を超えたらその成分名を表示に使う。塩化物泉、硫酸塩泉などだ。成分のいずれも基準値に達していないのが単純泉とされる泉質である。

有効成分の種類は単純泉が一番多く多彩だ。肌への刺激が少なくまろやかで湯あたりも少ない。昔からの名湯とされる多くは実は単純温泉である。

建て替え工事を控え明日から休館になる長門市湯本温泉の象徴的存在だった「恩湯(おんとう)」は、全国の単純温泉番付で小結に列せられたこともある。特に男湯は足元から常に源泉が湧き出し、湯は新鮮そのもの。

浴槽につかるとほのかに硫黄の匂いがする。新鮮なアルカリ性単純泉ゆえの特徴だ。源泉温度は40度前後のぬるさ。冬場に芯まで温まって外に出ても湯冷めがない、まさに本物の力を持つお湯だ。

湯本温泉は全国人気温泉地ベスト10入りを目指して温泉街の再生計画を進めるが、温泉街再興の原点は名湯をいかに生かすかだ。恩湯が伝えてきた単純ではない湯力を徹底分析してみたい。

20170516154052e56.jpeg

20170516154054a35.jpeg

………………………………………………………………………………

温泉の泉質のいろいろ

温泉の泉質について

温泉は、含まれている化学成分や、温度、液性(pH)、色、匂い、味、肌触りなど様々な特徴があります。
温泉の泉質は、温泉に含まれている化学成分の種類とその含有量によって決められ、下の表のように10種類に分類することができます。
温泉が療養泉の基準に満たない場合は泉質名はありません。その場合は温泉分析書に「温泉法上の温泉」または「温泉法第2条に該当する温泉」というように記載されています。
以前は、炭酸泉、重曹泉、食塩泉、正苦味泉、芒硝泉、石膏泉、緑礬泉など、いわゆる「旧泉質名」が使われていましたが、昭和53年から、主な化学成分を記した「新泉質名」を使うよう、環境省によって改訂されました。

1.単純温泉

基準
温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25℃以上のものです。このうちpH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼んでいます。

特徴
肌触りが柔らかく、癖がなく肌への刺激が少ないのが特徴で、アルカリ性単純温泉は、入浴すると肌が「すべすべ」する感触があるのが特徴です。

例えば
岐阜県・下呂温泉、長野県・鹿教湯温泉など

泉質別適応症
浴用 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態

2.塩化物泉

基準
温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物イオンのものです。

特徴
陽イオンの主成分により、ナトリウムー塩化物泉、カルシウムー塩化物泉、マグネシウム―塩化物泉などに分類されます。日本では比較的多い泉質です。塩分が主成分となってぃるので、飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合やマグネシウムが多い場合は苦く感じられます。

例えば
静岡県・熱海温泉、石川県・片山津温泉など

泉質別適応症
浴用 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用 萎縮性胃炎、便秘

3.炭酸水素塩泉

基準
温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンのものです。

特徴
陽イオンの主成分により、ナトリウムー炭酸水素塩泉、カルシウムー炭酸水素塩泉、マグネシウムー炭酸水素塩泉などに分類されます。カルシウムー炭酸水素塩泉、マグネシウムー炭酸水素塩泉などに分類されます。カルシウムー炭酸水素塩泉からは、石灰質の温泉沈殿物、析出物が生成されることがあります。

例えば
和歌山県・川湯温泉、長野県・小谷温泉など

泉質別適応症
浴用 きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
飲用 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)

4.硫酸塩泉

基準
温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンのものです。

特徴
陽イオンの主成分により、ナトリウムー硫酸塩泉、カルシウムー硫酸塩泉、マグネシウムー硫酸塩泉などに分類されます。

例えば
群馬県・法師温泉、静岡県・天城湯ケ島温泉など

泉質別適応症
浴用 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

5.二酸化炭素泉

基準
温泉水1kg中に遊雛炭酸(二酸化炭素)が1,000mg以上含まれているものです。

特徴
入浴すると全身に炭酸の泡が付着して爽快感があるのが特徴です。ただし加温をすると炭酸ガスが揮散する場合があります。飲用すると炭酸の爽やかな咽越しが楽しめます。日本では比較的少ない泉質です。俗に「泡の湯」とも呼ばれることがあります。

例えば
泉温が比較的高いものは大分県の長湯温泉が有名です。泉温の低いものは山形県・肘折温泉郷の黄金(こがね)温泉など。

泉質別適応症
浴用 きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
飲用 胃腸機能低下

6.含鉄泉

基準
温泉水1kg中に総鉄イオン(鉄Ⅱまたは鉄Ⅲ)が20mg以上含まれているものです。陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類されます。

特徴
温泉が湧出して空気に触れると、鉄の酸化が進み赤褐色になる特徴があります。

例えば
兵庫県・有馬温泉など。

泉質別適応症
飲用 鉄欠乏性貧血症

7.酸性泉

基準
温泉水1kg中に水素イオンが 1mg以上含まれているものです。

特徴
口にすると酸味があります。殺菌効果もあります。ヨーロッパ諸国ではほとんど見られない泉質ですが、日本では各地でみることができます。

例えば
秋田県・玉川温泉、岩手県・須川温泉など。

泉質別適応症
浴用 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症

8.含よう素泉

基準
温泉水1kg中によう化物イオンが10mg以上含有するものです。

特徴
非火山性の温泉に多く、時間がたつと黄色く変色します。

例えば
千葉県・青堀温泉など。

泉質別適応症
飲用 高コレステロール血症

9.硫黄泉

基準
温泉水1kg中に総硫黄が2mg以上含まれているものです。

特徴
硫黄型と硫化水素型に分類され、日本では比較的多い泉質です。タマゴの腐敗臭に似た特有の臭いは、硫化水素によるものです。

例えば
栃木県・日光湯元温泉、神奈川県・箱根温泉郷の小涌谷温泉など。

泉質別適応症
浴用 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害が加わる)
飲用 耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症

10.放射能泉

基準
温泉水1kg中にラドンが30×10-10キュリー以上(8.25マッへ単位以上)含まれているものです。
放射能というと人体に悪影響を及ぼすと考えられがちですが、レントゲン等の放射線量よりずっと少ない量となっています。ごく微量の放射能は、むしろ人体に良い影響を与えることが実証されています。

例えば
鳥取県・三朝温泉、山梨県・増富温泉など。

泉質別適応症
浴用 高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など



詳しい新旧泉質名対照表を見る

No 掲示用新泉質名 旧泉質名 新泉質名

1 単純温泉 単純温泉 単純温泉
アルカリ性単純温泉

2 塩化物泉 食塩泉
含塩化土類-食塩泉
含土類-食塩泉 ナトリウム-塩化物泉
ナトリウム・マグネシウム-塩化物泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉

3 炭酸水素塩泉 重炭酸土類泉
重曹泉 カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉
ナトリウム-炭酸水素塩泉

4 硫酸塩泉 硫酸塩泉
正苦味泉
芒硝泉
石膏泉 硫酸塩泉
マグネシウム-硫酸塩泉
ナトリウム-硫酸塩泉
カルシウム-硫酸塩泉

5 二酸化炭素泉 単純炭酸泉 単純二酸化炭素泉

6 含鉄泉 鉄泉
炭酸鉄泉
緑礬泉 鉄泉
鉄(Ⅱ)-炭酸水素塩泉
鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉

7 酸性泉 単純酸性泉 単純酸性泉

8 含よう素泉 含ヨウ素-食塩泉 含よう素-ナトリウム-塩化物泉

9 硫黄泉 硫黄泉
硫化水素泉 硫黄泉
硫黄泉(硫化水素型)

10 放射能泉 放射能泉 単純弱放射能泉
単純放射能泉
含弱放射能-○-○泉
含放射能-○-○泉
関連記事