赤ちゃんポスト10年

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有明抄 5/13
 
<ぼくが ここに いるとき/ほかの どんなものも/ぼくに かさなって/ここに いることは できない/もしも ゾウが ここに いるならば/そのゾウだけ/マメが いるならば/その一つぶの マメだけ/しか ここに いることは できない>。

詩人まどみちおさんの「ぼくが ここに」である。人間だけでなく、象も豆も等しく命は育まれ、それぞれに尊いとうたっている。国内で唯一、親が育てられない子どもを匿名で預かっている熊本市の施設「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」は、設置から10年がたった。

2015年度までに託されたのは125人。そこにたどりつく理由はさまざまだが、望まない妊娠でも、赤ちゃんの命の重さに差などありはしない。誰かが力を貸さねば生きられない、かけがえのない命である。

確かに匿名ゆえ、親を知らずに育つ苦しさは想像を超えたところにあるだろう。そこに人権上の課題を抱えていて、育児放棄を助長するとの批判もあるが、人の命とはかりに掛けることなど到底できない。一民間施設まかせにしてきた国の無策こそが問題である。

くだんの詩は<ああ このちきゅうの うえでは/こんなに だいじに/まもられているのだ>と続く。一人一人の命が大切にされる。その一点だけでも、この施設の存在意義はある。

…………………………

ぼくが ここに

まど・みちお

ぼくが ここに いるとき
ほかの どんなものも
ぼくに かさなって
ここに いることは できない

もしも ゾウが ここに いるならば
そのゾウだけ

マメが いるならば
その一つぶの マメだけ
しか ここに いることは できない

ああ このちきゅうの うえでは
こんなに だいじに
まもられているのだ
どんなものが どんなところに
いるときにも

その「いること」こそが
なににも まして
すばらしいこと として

出典
詩「ぼくはここに」



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