赤ちゃん

越山若水 5/10

胎児に異常がないかを調べる出生前検査を受けるべきかどうか、川上未映子さんは悩んだ。おなかの赤ちゃんは「100%こちらの都合」でつくられ生まれてくる。

ならば、と考えた。その「生」を「100%の無条件」で全力で受け止める。「それが筋、ってもんじゃないのだろうか」(「きみは赤ちゃん」文藝春秋)と。

川上さんといえば芥川賞作家。自身初めての出産体験の一部始終をつづったエッセーは普通の女性には筆舌に尽くし難い苦しさを的確に言葉にし多くの共感を得た。

ただ、川上さん夫婦のように「100%の無条件」で赤ちゃんを受け止められない人がいるのも現実だ。思いもかけない妊娠、経済的困窮、周囲の反対など理由はさまざまある。

そんな親が匿名で乳幼児を預け入れる国内唯一の赤ちゃんポストが、運用を開始して10年となった。民間の慈恵病院が熊本市で設置、運営している「こうのとりのゆりかご」だ。

これまでの9年間に託されたのは125人。並行して受け付けている妊娠相談から294件が特別養子縁組につながった。ともに重い数字である。

慈恵病院の取り組みがなければ、この子たちはどうなっていたか。おととい、自宅トイレに乳児の遺体を遺棄したとして茨城県内の30代の母親が逮捕された。頭で理解するしか能のない男の1人でも事の深刻さに身を切られる思いだ。


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35歳ではじめての出産。それは試練の始まりだった!
芥川賞作家の川上未映子さんは、2011年にやはり芥川賞作家の阿部和重さんと結婚、翌年、男児を出産しました。つわり、マタニティー・ブルー、出生前検査を受けるべきかどうか、心とからだに訪れる激しい変化、そして分娩の壮絶な苦しみ……妊婦が経験する出産という大事業の一部始終が、作家ならではの観察眼で克明に描かれます。
さらに出産後の、ホルモンバランスの崩れによる産後クライシス、仕事と育児の両立、夫婦間の考えの違いからくる衝突、たえまない病気との闘い、卒乳の時期などなど、子育てをする家族なら誰もが見舞われるトラブルにどう対処したかも、読みどころです。
これから生む人、すでに生んだ人、そして生もうかどうか迷っている人とその家族に贈る、号泣と爆笑の出産・育児エッセイ!

〈目次〉
出産編 できたら、こうなった!

陽性反応
つわり
出生前検査を受ける
心はまんま思春期へ
そして回復期
恐怖のエアロビ
かかりすぎるお金と痛みについて
生みたい気持ちは誰のもの?
夫婦の危機とか、冬
そして去ってゆく、生む生むブルー
いま、できることのすべて
乳首、体毛、おっぱい、そばかす、その他の報告
破水
帝王切開
なんとか誕生

産後編 生んだら、こうなった!

乳として
かわいい♡拷問
思わず、「わたし赤ちゃんに会うために生まれてきたわ」と言ってしまいそう
頭のかたちは遺伝なのか
3ヶ月めを号泣でむかえる
ひきつづき、かかりすぎるお金のことなど
髪の毛、お肌、奥歯に骨盤、その他の報告
父とはなにか、男とはなにか
夫婦の危機とか、夏
いざ、離乳食
はじめての病気
仕事か育児か、あらゆるところに罪悪感が
グッバイおっぱい
夢のようにしあわせな朝、それから、夜
ありがとう1歳
あとがき
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