学校は楽しい場

いばらぎ春秋 5/7

部屋の中は雑然とし、机の上には給食で残ったパンやマーガリンなどが並んでいた。

中学1年の冬、同級生と連れ立って担任の自宅アパートを訪ねた。新人の先生だった。円盤投げの選手だったという先生の右手は大きく、ごつごつしていたのが印象深い。突然押し掛けたのだが、追い返されることもなく、一緒にこたつに入って一晩中、とりとめのない話に付き合ってくれた。

学校の先生は時に人生の選択にも影響を及ぼす。いい思い出として心に残る半面、嫌な思いをした場合はずっと消えない暗い感情となる。

芥川賞作家の村上龍さんは自身の高校時代を描いた青春小説「69」のあとがきで記した。「わたしを傷つけた教師のことを今でも忘れない」「彼らは本当に大切なものをわたしから奪おうとした」。

取るに足らぬことに目くじらを立て、尊厳を踏みにじるような先生は、いつの時代にも存在する。失敗や勘違いを責め立てるのではなく、おおらかに受け止め、包み込む教育の実践を求めたい。子どもたちは先生を見ている。

いい先生は表情が豊かだ。笑顔一つで教室を明るくし、相手の気持ちをほぐす。そんな先生と取材を通しても出会ってきた。学校が楽しい場であることを願う。 

…………………………

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あらすじ

ロックミュージックと学生運動が盛んな1969年、長崎・佐世保。進学高校の3年生ケンは活発な問題児で、女子生徒の気を惹きたい一心で仲間と学校をバリケード封鎖する。捕まって謹慎処分を受けてもエネルギーは止まらない。今度は街を挙げての盛大なフェスティバルの準備を始めた。



とにかく笑える

1969年のことを書いた、1987年の小説。

めちゃくちゃ笑える。

龍先生。またしても。これを読んでから完全にハマった。

村上龍作品を読んだことない人にはこれをまずおすすめしたい。


大体の作品のテーマは暴力かドラッグかSMかテロか反体制かって感じでハードなんだけど、


楽。面白い。超読みやすい。何度でも読み返せる。読んでてやる気が出てくる。

タイトルがタイトルだし、俺が買った文庫の表紙はショッキングピンクだし、どうせまたハードコアなやつだろうって思ってた。

違う。

ハジける青春。



「おはよう」
と、その涼し気な声は聞こえた。登校時の、学校前の、坂道、振り向くと、そこにはあの仔鹿のバンビがいた。松井和子だった。震えた。
「あ、おはよう」
と僕は答えてにこやかに笑い松井和子の肩に手を回して髪を撫でながら、というのは嘘で、口がきけなかった。
こういう「〜というのは嘘で、」みたいなのがよく出てくる。ウブで爽やかで甘酸っぱい。


要所でこういう感じで単語が強調される。


読んでて腹がよじれるほど笑った小説は唯一これだけ。

ビートたけしが言ってた「振り子の法則」を思い出した。

振り子のように生きないと。10の暴力は10の愛に変わる可能性がある。振り子の片方を高く上げれば、反対側にも高く上がる。人をもっと笑わせるためにひどいことを考えれば、反動で笑わせられる。人を嫌えばその反動で愛は深くなる。


つまり、気分を害するようなエグい事を言える人は、向きが変わればよっぽど笑える事だって言えるということ。

いやー、もっと早くこの本に出会いたかった。マイバイブル。



実体験?

文体は軽いし方言きついし全体的に可笑しいけど、随所に力強いメッセージが込められてる。

実体験が基になってるからかな。追憶しながら書いてるって感じ。

最初の書き出しに「あの頃の仲間たちに…」と書いてあり、終盤は登場人物一人一人の「その後」が書いてある。

中に「同級生が米軍基地の黒人と付き合いだす」って小話があるんだけど、これが少し面白い。

米兵に日本の女が奪われるのを見て育ってるから、村上龍は米兵を毛嫌いしてるはずなのに、高校卒業後の東京・福生の時(限りなく透明に近いブルー)ではドラッグと金欲しさに日本の女を米兵に斡旋してる。

なにやっとんねん。。

でもそういうカルマみたいなのってあるよね。



あとがきを一部

あとがきに良いことが書いてあるから紹介しよう。

「この小説に登場するのはほとんど実在の人物ばかりだが、
当時楽しんで生きていた人のことは良く、
楽しんで生きていなかった人のことは徹底的に悪く書いた。
楽しんで生きないのは、罪なことだ。
わたしは、高校時代にわたしを傷つけた教師のことを今でも忘れていない。
数少ない例外の教師を除いて、彼らは本当に大切なものをわたしから奪おうとした。
彼らは人間を家畜へと変える仕事を飽きずに続ける「退屈」の象徴だった。
そんな状況は、今でも変わっていないし、もっとひどくなっているはずだ。
だが、いつの時代にあっても、教師や刑事という権力の手先は手強いものだ。
彼らをただ殴っても結局こちらが損をすることになる。
唯一の復讐の方法は、彼らよりも楽しく生きることだと思う。
楽しく生きるためにはエネルギーがいる。
戦いである。
わたしはその戦いを今も続けている。
退屈な連中に自分の笑い声を聞かせてやるための戦いは死ぬまで終わることがないだろう。」





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