聞く力

正平調 5/7

ベストセラー「聞く力」を著した阿川佐和子さんの体験談である。聞き役なのに、ある人との対談ではついつい話し続けてしまった。なぜだろう。考えてたどり着いた結論は、ただ一つ。

「それで?」「面白いねえ」とひたすら言葉を挟む人だった。不思議なことにそれだけで話したくなる。ここが聞き上手の奥義と教えた対談相手は作家城山三郎さん。

封をした思いを少し口にするだけで楽になるものだ。この方も静かな相づちで重い心をもみほぐしてきたのだろう。今年の神戸新聞社会賞受賞者、牧秀一さんである。「阪神淡路大震災よろず相談室」の理事長だ。

震災直後の避難所で「先生なら、人の話、聞けるでしょ」と言われ、定時制高校の教諭だった牧さんはボランティア活動を始めた。以来、高齢者らの声に耳を傾ける。

数年前、本紙で読んだ復興住宅での場面が印象深い。夫を失った高齢の女性に牧さんが言う。「ご飯、ちゃんと食べてるか」。短い一言に女性は目を潤ませた。積み上げてきた信頼関係をうかがわせる場面である。

震災と向き合う多くの皆さんに神戸新聞平和賞、社会賞を贈ってきた。牧さんを含む受賞者一覧を見直しながら思う。それぞれの地道な活動が太い縄となり、苦難の坂を引っ張ってくれたと。

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 「聞く力  心をひらく35のヒント」 阿川佐和子 著

   まえがき  

Ⅰ  聞き上手とは  

1  インタビューは苦手

2  面白そうに聞く  

3  メールと会話は違う   

4  自分の話を聞いてほしくない人はいない

5  質問の柱は三本

6  「あれ?」と思ったことを聞く

7  観察を生かす

8  段取りを完全に決めない

9  相手の気持を推し測る

10 自分ならどう思うかを考える   

11 上っ面な受け答えをしない

Ⅱ  聞く醍醐味    

12 会話は生ものと心得る

13 脳みそを捜索する

14 話が脱線したときの戻し方

15 みんなでウケる

16 最後まで諦めない

17 素朴な質問を大切に

18 お決まりの話にならないように

19 聞きにくい話を突っ込むには  

20 先入観にとらわれない   

Ⅲ  話しやすい聞き方

21 相づちの極意   

22 「オウム返し質問」活用法    

23 初対面の人への近づき方

24 なぐさめの言葉は二秒後に

25 相手の目を見る

26 目の高さを合わせる

27 安易に「わかります」と言わない

28 知ったかぶりをしない

29 フックになる言葉を探す

30 相手のテンポを大事にする  

31 喋りすぎは禁物?

32 憧れの人への接し方   

33 相手に合わせて服を選ぶ

34 食事は対談の後で

35 遠藤周作さんに学んだこと   あとがきにかえて



     阿川さんの心がけている世界が、よく伝わってくる本でした。  人の話はそれぞれで、なにも 立派な話や おもしろおかしい話をする必要はない。 自らのことや思いを 自らの言葉で 一つずつ 具体的に話ししていけば、その中に その人らしさや人格が表れて、お互いに小さな発見があり、共感も生まれるということが、分かってきました。






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