こどもの日ぐらいゆっくり休みたい

正平調 5/5

「こどもの日」に合わせて、「大人も読みたい こども歳時記」(小学館)から、小さな俳聖たちの句を届けたい。〈きょうりゅうはほねしかなくてすずしそう〉。小学2年生の作という。

次は中学3年生。〈こいのぼり一年ぶりの深呼吸〉。ベランダや庭で、さわやかな空気を胸いっぱい吸い込んで元気そうだ。小6の男の子は5月の風に吹かれてこう詠んだ。〈薫風やきれいに見えるお母さん〉。

難しい言葉はない。目の前のものを素直に眺め、少ない手持ちの単語を並べる。それだけで見せる、この美しい世界はどうだろう。それを「子どもの豊かな表現力」とありふれた言い回しで書くわが凡才を呪う。

子どもは「不完全な大人」ではないと、こども歳時記を監修した俳人長谷川櫂(かい)さんが書いていた。幼いころの新鮮な感受性は年を重ねるごとに失われていく。ならば、大人こそ「不完全な子ども」ではないかと。

きょうはその感受性に耳を澄ます、あるいは取り戻す1日にしてもいい。そう、大人も子どもになる日。例えば、わが家やお出掛け先で見たままを五七五にしてみたら、胸によみがえるものがあるかもしれない。

さて終わりは小学2年生、とかく忙しい現代っ子の句をどうぞ。〈こどもの日ぐらいゆっくり休みたい〉

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〈 書籍の内容 〉
大人も読みたい こども歳時記
2011年度から実施された新しい小学校指導要領では、はじめて「俳句を作る」ことがとりあげられました。それにともない、学校では子どもが使いやすい「歳時記」が嘱望されています。本書は、子どもの興味をひき、また生活に密着した季語を370余りとりあげ、全ての季語にわかりやすくて本格的な解説をつけ、子どもの秀句と大人の句をとりあげ、美しいカラー写真とともに楽しめる内容となっています。監修は、「朝日俳壇選者」読売新聞俳句コラムの執筆者であり、読売文学賞はじめ数々の賞に輝く、俳句界のトップランナー長谷川櫂氏。また、ぜひ覚えてほしい古今の名句を、新聞雑誌などで活躍の俳人により解説したコラムも読み応えがあります。初心者にもわかりやすい、「俳句の作り方のポイント」や「句会のやり方」などのコラムも実践的ですぐに役に立ちます。日本の伝統的な行事、旧暦への関心も高まるなか、家庭での親子のコミュニケーションを高める意味でも、一家に一冊置いておきたい「歳時記」です。
〈 編集者からのおすすめ情報 〉
日本初の本格的子どものカラー歳時記です。日本初ということは、世界初、いえいえ宇宙初(!)です。タイトルの「大人も読みたい」は、ただのうたい文句ではなく、大人にもぜひ読んでいただきたい、読み応えある本格的な内容となっています。

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『大人も読みたい こども歳時記』のすすめ
Posted on 2014年3月6日 by youko
0308先日、小学館から刊行された『大人も読みたい こども歳時記』(長谷川櫂監修、季語と歳時記の会編著、1600円+税)を早速使っています。使いやすく、タイトル通り子どもも大人も読みたくなる内容です。

春・夏・秋・冬・新年の季語群のインデックスが5色に分けてあるので、とても引きやすいです。1ページに季語が2つずつ。本格的でわかりやすい季語解説。例句は子どもと大人の名句が3句。漢字にはルビがふってあります。そして全ての季語に、いきいきとしたカラー写真がついています。子どもの笑顔が印象的で見ているだけで幸せな気分になります。子どもたちが季語に親しみ、俳句をいっぱい作ってくれるといいなと思います。

「俳句の作り方のポイント」や「にゃーたが教える句会のやり方」は、俳句作りや句会の実践に役立ちます。にゃーたというのはイラストに登場する俳句の好きなかわいい猫の名前です。初めて俳句を作る子どもたちはもちろん、指導される先生方の心強い味方になることでしょう。

また、家庭でもこの歳時記をガイドブックに俳句を作ってみてはいかがですか。例えば、1つの季語を選んで家族が1句ずつ詠むと個性の違いが出て楽しいのではないでしょうか。

大人にとっては、例句に載っている子どもたちの俳句がよい刺激を与えてくれると思います。「はっきりとわかりやすく」「言われてみるとハッとする新鮮な俳句」を詠みたいと思っているのですが、「説明」「理屈」「意味不明」などに陥ることがあります。そんな時、子どもたちの俳句に触れると喚起されるものがあります。例句の中から子どもたちの俳句をいくつか紹介します。

ひな祭り結婚するなと父が言う  萌(小5)

カランコロン氷の音して夏が来た  栞(小4)

えだまめとぐりんぴいすはいとこかな  歩夢(小1)

着膨れやチャック開けるとまたチャック  愛子(小5)

福寿草飾りのごとく生えてをり  裕隆(小4)

いいな、おもしろいなと感じたことを素直に詠んでいます。言われてみるとハッとする俳句です。作者の思いが読者にきちんと伝わり、新鮮な感動が生まれます。監修の長谷川櫂さんが、この歳時記の冒頭「子どもの俳句、大人の俳句」の中で述べているように大人は子どもの俳句にこそ大いに学ぶところがあると思います。(木下洋子)

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「大人も読みたい こども歳時記」季語と歳時記の会:著/長谷川櫂:監修(小学館)

 小学校の学習指導要領(国語)に、「経験したこと,想像したことなどを基に,詩や短歌,俳句をつくったり,物語や随筆などを書いたりすること。」という文言が入ってから、小学生の俳句作りに関する関連本がいくつか出版されました。その数ある中で、本書をご紹介するのは、なんといっても本書の冒頭に掲げられた、監修者の言葉が良かったからです。
 「子どもの俳句、大人の俳句」として題されたこの文章は、編集方針の表明と言ってもよいでしょう。俳句作りや俳句指導のみならず、大人による子供理解の本質を示した名文でした。その一部をご紹介しましょう。
 子どもの俳句はどうあるべきか。
 この問いは昔から漠然とした形ではあったのですが、数年前に小学校で俳句の授業がはじまってから、急に切実な問題として浮上してきました。(中略)子どもの俳句をめぐっては大きく分けるとふたつの考え方があります。ある人は「子どもは子どもらしい俳句を作るべきだ」と考えます。(中略)反対に「子どもも大人のような俳句を作るべきだ」と考える人がいます。(中略)私はどちらの考え方もおかしいと考えています。
では、監修者の長谷川さんは、どんな考えをお持ちなのか。それはぜひ本書をご覧いただくとして、大切なのは、こうした問題意識で書籍が編集されていると言うことです。子供用の歳時記ということで、文字数やページ数が限られる中で、情報をどの観点で絞り込んで行くかが最も大切な編集作業です。このように編集コンセプトを明快に立て、それを読者に示すというのは重要なことです。
ページ構成 さて、いくらコンセプトがしっかりしていても内容がそれに伴っていなければ意味がありません。本書は、その意味でもなかなか工夫されているなと思いました。
 左は「秋」のページです。本書の基本構成は、見開きに4つの季語が取り上げられるという形。季語の中には、関連語句が示されている場合もあります。季語の説明の文章は総ルビです。また、左の写真のように、時折コラムが入ることがあります。
 それぞれの季語には、必ず3つの例句が取り上げられています。もちろん、その季語を使った例句です。この例句紹介では、コンセプトにあったとおり、俳人の句も小中学生の句も並列で紹介されています。
 巻末には、「句会のやり方」が紹介されています。説明に使われている語句は、「席題句会・吟行句会」「投句・清記・披講」など、本格的なものばかり。つまり、子供扱いしていないのです。このあたりも、一貫していると思いました。
 俳句はとても少ない言葉で表現する形式ですから、指導要領に掲載されたとはいえ、指導するのはかなり難しいことだろうと思います。本書のような歳時記が学校図書館などにあれば、少し楽しく活動できるのではないかと思いました。
 本書の表紙や扉を飾っているのは、安西水丸さんのイラストです。本書の初版は、2014年3月ですので、この本のお仕事が、安西さんの最後のお仕事だった可能性があります。そういう意味でも貴重な一冊かもしれません。
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