学芸員の眼力

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地軸 5/2

 始祖鳥の化石が150年前、ドイツ南部の採石場で発掘された。この地域はさまざま種類の化石が見つかる「産地」。ドイツでは価値が分からず、ロンドンの大英自然史博物館に安値で売ってしまった。購入した研究員の眼力を褒めるべきだろう。

 1億5千万年前に生息し、羽毛がある外見は鳥だが、鋭い歯や前脚に爪がある。鳥の祖先か、恐竜の仲間か。進化論を巡って論争を巻き起こした化石を東京の国立科学博物館で見て、地球の歴史の奥深さに感じ入った。

 始祖鳥と同様に人だかりができていた一角があった。日本刀のような銀色の輝きを放つ巨大な輝安鉱の結晶。産地「西条市」の表示に目を細めた。明治時代に市之川鉱山で採掘されて海を渡り、1世紀ぶりの「里帰り」。

 当時の日本では砲弾の材料などの「資源」として扱っていたが、世界的には自然科学史の貴重な「資料」として評価されていた。各国が競って買い求め、多くが流出。

 「英国では自然科学の重要性を国が認め、予算をかけて宝を後世に残そうとあらゆる努力を惜しまなかった」。今回の展示に携わった研究員は、うらやましがっていた。

 日本では地方創生担当相が学芸員の役割や文化財への見識も持たず、観光振興に支障を来しているとして「がんは学芸員」と放言するお粗末ぶり。国には地方の宝を見つけ、磨く役割があるはず。そんな認識では目の前の宝も石ころにしか見えないだろう。

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