過労死ライン

斜面 5/2

「今の学校現場はどうかしてる。これで子どもとしっかり向き合えるのか」。がり版で教材を刷った時代の教員OBの嘆きだ。教頭の息子はいつも夜明け前に出て帰宅は深夜。いくら多忙な仕事でも自分の経験に照らすと異様に映った。

 学校基本調査をはじめ問い合わせの数々、保護者や地域への対応、会議…。窓口の職務は切りがない。担任も同じだ。勤務時間は1日7時間45分だが「どだい無理な決まり」とある先生に一蹴された。給食も指導に時間を取られ食べる余裕がないという。

 きのうのメーデーは長時間労働の是正が重点テーマになっている。長野市の会場には「部活指導に正当な手当を」との要求も見られた。かつては「聖職か労働者か」と論争になった。地域では教養人として一目置かれ、子どもには絶対的存在として聖職の色が濃い時代でもあった。

 子どもの家庭環境が多様化し保護者の希望も複雑になった―。これも現場からよく聞く話だ。残業に加え自宅への持ち帰りも多い。夏休みがあっても自主研修日はほとんど取れない。やりがいや充実感が薄れ、多忙感と徒労感が覆う現場となれば深刻だ。

 文部科学省が先週発表した実態調査では全体に勤務時間が増え、多くは「過労死ライン」とされる週20時間の時間外労働を上回った。それでも手当支給がないのでは人材確保も難しかろう。この結果を子どもと向き合える環境改善に生かさねば。また“迷惑な調査”で終わらせてはなるまい。


南風録 5/2

 「金八先生の職員室がうらやましい」。かつての人気テレビドラマ「3年B組金八先生」の脚本を書いた小山内美江子さんは、現職の教師から愚痴をこぼされたそうだ。

 現実の職員室は、旅行や車のことなどたわいない話題が中心で、授業について意見を交わすような雰囲気はないとのこと。今から30年以上前の話である。武田鉄矢さんが演じるような熱血教師とも親交があった小山内さんは、意外だったらしい。

 あちこちから先生のため息が聞こえてきそうなのが、最近の職員室である。中学教師の57%が「過労死ライン」とされる月80時間超の残業をしている実態が明らかになった。“脱ゆとり”による授業時間の増加と部活動の負担が影響している。

 鹿児島県内のある若手教師は山積みの書類に心が折れそうになる。授業だけで大変なのに、国や自治体からのアンケートが多いと嘆く。子どもと向き合う時間が犠牲になっているとすれば、本末転倒だろう。

 それでも志の高い先生が多いことが救いだ。だが、教師としての責任感に頼ってばかりはいられない。無理を続ければ体を壊す。働き方改革は学校にも必要だ。

 「われわれはミカンや機械を作っているんじゃない。毎日、人間をつくっているんだ」。金八先生の名ぜりふである。ゆとりを持って子ども一人一人に全力でぶつかってこそ、先生たちのやりがいというものだろう。
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