透明化と強化

地軸 4/22

 柔らかい口調で、マラソン選手の趣味や好きな食べ物、恋人の存在といった細かなネタを中継の解説で紹介する。元五輪マラソン代表の増田明美さんの情報の多さに驚く。苦しい練習に耐えた選手を尊敬し、褒めたいからという。

 「これでいいのでしょうか」。2年前の世界陸上女子マラソン代表選考で、彼女が日本陸連幹部に問うた。選考大会の一つで優勝した選手が落選し、別の大会の3位が選ばれたためだ。「走りが消極的」との説明に「主観が入りすぎている」と指摘した。求めたのは高い透明性。

 その声が届いたと言っていい。何度も物議を醸した選考方式がようやく見直される。東京五輪の代表選びでは異なる大会の成績の比較ではなく、一発選考の要素を取り入れる。従来より客観的だと関係者の評判も良い。

 日本のマラソンは世界のトップに水を開けられ、過去3大会五輪のメダルから遠ざかる。新方式は選手の競争意識を高める効果もあり、強化につながると期待される。

 ただ長距離界をけん引する実業団は駅伝を優先させる傾向が依然強い。大会の過密日程がマラソンへの調整を難しくし、海外での「武者修行」もままならない。

 「海外で場数を踏むことで本番に力を発揮できるようになる。その経験が私には足りなかった」。増田さんは途中棄権した自身の五輪のレースをこう振り返る。「お家芸」復活のため、意識改革が必要なのは陸連だけではない。

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