消えたポテチ

中日新聞 社説 4/22

温暖化と私たち 風が吹けばポテチが

 風が吹けば、ポテチが消える-。それはつまり、温暖化は台風に姿を変えて北海道に上陸し、その影響が私たちの暮らしの中に分け入ってきたということだ。気候変動は人ごとではないということだ。

 畑の異変は、暮らしに及ぶ。

 この春、ポテトチップスの販売の完全中止や一時休止が相次ぎ、商品の種類が激減した。

 原因は、気候変動、温暖化だと言っていい。

 ジャガイモの主産地、北海道十勝地方では昨年、六月に長雨が続き、八月だけで三つの台風が上陸し、畑の被害も相次いだ。

 近年まで、梅雨はなく、台風とも無縁に近かった北海道。気候は急変しつつある。国内産の八割を占める道産ジャガイモの出荷量は、前年に比べ約一割、減少した。

 ポテトチップスメーカーは、国産志向が強い。100%をうたう大手もある。輸入を増やすにも限りがある。五月から九月に収穫される原料の不足が反映されて、メーカー側は定番や売れ筋商品への絞り込みを余儀なくされた。

 大手ネットオークションサイトに、「入手困難」になった商品が、二十袋十二万円で出品された例もあるという。

 世界の年間平均気温は三年連続で最高を更新中だが、十勝でも夏場の高温による農業被害が近年目立つ。もともと寒冷地で強く高温に弱いジャガイモ、小麦は、それでなくても近年は減少傾向にあるという。一方で、サツマイモやワインブドウの適地になりつつある。激変だ。

 水産の分野でも、海水温の変化によるとみられるサケの不漁、ホタテの斃死(へいし)も深刻化しつつある。

 農産物は、天気のたまものだ。それだけに農業王国北海道では、温暖化の推移にも敏感だ。

 北海道開発局と道が先月まとめた「今後の水防災対策のあり方」に関する提言は、道内で毎時三〇ミリを超える大雨が三十年前の約二倍に増加と指摘して、今世紀末には最大日降水量が今の一・二四倍になるとの予測を提示。「気候変動の影響が現実のものになったと認識し、北海道から先導的に気候変動の適応策に取り組むべきだ」と訴える。

 “消えたポテチ”が、教えてくれている。

 温暖化はすでに北海道の主産業に大きな変化をもたらして、私たちの暮らしにも入り込んでいる。

 米大統領が方針を変えようと変えまいと、それは私たち自身の身近に迫った重要な課題なのだと。


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