学芸員

忙人寸語 4/18

 「あなたはがんです」と告げられたら…。経験者によると瞬間、目の前が真っ暗になり、病院からの帰路の記憶がなく、夜通し泣き続ける。日本人の2人に1人が経験する試練。そのショックは計り知れない。

山本幸三地方創生担当相が16日、外国人観光客に対する文化財の説明や案内が不十分として「一番の“がん”は文化学芸員」と発言。批判されると、謝罪、撤回した。

「自分たちだけが分かっていればいい、というのが学芸員の連中だ。この連中を一掃しないと駄目」との言葉は、「学芸員の方々に観光マインドを持ってもらう必要があるという趣旨」だったと言い訳した。

取材で会った学芸員の多くは無知な記者にも辛抱強く、かみ砕いて教えてくれた。別段、取材に限らず、それぞれが所属する場所で、展示やガイドなどを通じ、知の扉を開ける手伝いをしてくれる。

母親をがんで亡くしたばかりの記者仲間と懇親会で会い「大変だったね」と献杯。「『がん』っていう言葉にすごい敏感で。『あいつはがんだな』なんて慣用句が許せない」と涙に暮れていた。深く共感できた。亡母が認知症に苦しんだため、今も「ボケちゃったんじゃない」などの軽口が嫌いだ。

「がん」「連中」。そんな言葉しか選べない人間が文化を斬る。先日も偉ぶって激高した閣僚が、すぐに謝った。そうした「連中」こそ末期政権の「病巣」?


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編集日記 4/18

 予備校講師でテレビ番組でも活躍する林修さんは、実は講師という仕事が嫌いなのだという。その理由は、プロ野球選手や物理学者になるといった夢を諦めた末にたどり着いた職業だからだと著書に述べている。

 とはいえ、授業で手を抜くことは絶対しない。報酬をもらっている以上、仕事は常に満点しか許されない―というのが林さんの職業観だ。これまで多くの受験生を志望校に送り込んできたというプライドがのぞく。

 厳しいプロ意識を持つ林さんは、良い仕事にはその価値に見合った評価がされるべきだとも考える。「相手の仕事を値切れば、結局自分が値切られる。だから、相手の高いレベルの技術やサービスに対してリスペクト(尊敬)の気持ちを持たなければならない」と述べている。

 かの人にはそういう考えはなかったのだろうか。「学芸員はがんだ」と発言した山本幸三地方創生担当相である。学芸員は、博物館資料の収集や保管、調査研究に精通するプロであり、プライドを深く傷つけるものだ。

 地方創生は、地域にかかわる全ての人たちが力を合わせなければ立ちゆかない。さまざまな仕事の価値を正しく評価できないようでは、大臣である自身の価値も値切られる。

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小社会 4/18

 あまりにもひどい暴言だ。文化施設の学芸員について「一番のがん」と決めつけ、「この連中を一掃しなければならない」と語った山本地方創生担当相。たちまち発言撤回と謝罪に追い込まれた。

 山本氏は外国人観光客らに文化財などの説明、案内が不十分だとした上で、「学芸員も観光マインドを持ってほしい」という趣旨だと釈明した。だったらそう言えばいい。「連中」や「がん」「一掃」などの言葉には差別的な底意さえ感じる。

 全国の博物館や美術館などで日夜奮闘している学芸員は、さぞや傷ついたろう。そしてがんと闘っている、多くの患者さんたちの心も。こんな不見識な閣僚がいることは、国民にとっても迷惑だ。

 学芸員は博物館法で定められた専門職員で、資料の保管や収集、展示や調査研究などに当たる。仕事の第一義は文化財を守り、後世に伝えること。「観光マインド」も必要だろうが、それは官民総出でやることだろう。

 発言を撤回し、謝罪すれば終わりというパターンが、今回も繰り返されないかと気になる。最近でも福島第1原発事故を巡り、自主避難者の帰還を「本人の責任」とした今村復興相がそうだった。この種の放漫な失言は枚挙にいとまがないが、辞任に至ったケースはまれだ。

 くめども尽きぬ閣僚の問題発言。問題を甘く見てもらったら困る。安倍政権の井戸は人材が枯れ、政治の劣化が進んでいるのではないか。

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鳴潮 4/18

 偏った見方にも程がある。山本幸三地方創生担当相である。おととい地方創生に関するセミナーに出席しこう述べた。外国人観光客らに文化財などの説明、案内が不十分だとして「一番のがんは文化学芸員。この連中を一掃しないと駄目」

 学芸員をやり玉に挙げたが、果たして役割、使命をご存じなのだろうか。博物館法に定められた専門職で資料の保管や展示、調査研究などを行う。文字にすればこれだけの仕事だ、などと思っていないか。

 挙げればきりがないが、例えば冬の林の中で見つかったホタル、ふすまの裏張りとして使っていた逓信大臣名の文書など、小さな生き物や資料から、かつての環境との違い、背後に広がる世界を説いてくれたのは学芸員だ。

 障害者や高齢者、外国人らにも親しみやすい施設を目指す「ユニバーサル・ミュージアム」。徳島県立近代美術館も取り組んでいるが、そこに息づいているのは学芸員の心配りやアイデアである。もちろん、企画展示にも宿っているだろう。

 山本氏は「自分たちだけが分かっていればいい、分からないなら来なくて良いよ、というのが学芸員の連中だ」と批判を重ねたようだが、批判されるべきはさて。

 誰から数えればいいのか、政治家の失言が後を絶たない。問われているのは学芸員の仕事ではなく、大臣自身の資質ではないか。

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北斗星 4/18

NHK総合テレビで土曜夜放送の「ブラタモリ」を見ていて感心するのが、案内役として登場する学芸員の豊かな知識と熱い語り口だ。知っていることを伝えるのがうれしくて仕方ないのだろう。

番組はタモリさんが全国各地をぶらぶら歩いて土地の成り立ちや街の歴史を深く探る。鋭い突っ込みや疑問に答えるのが、博物館や郷土資料館の学芸員たち。大学の研究者が加わることもある。皆さんの深い地元愛に敬服する。

学芸員は博物館法に定められた専門職で、歴史や民俗、芸術、自然科学分野の資料の収集と保管、展示、調査研究を主な仕事とする。その学芸員を「がん」呼ばわりした山本幸三地方創生担当相が発言の撤回と謝罪に追い込まれた。

文化財を積極的に観光に活用すべきだと考える山本大臣にとって、学芸員は頭の固い連中に見えたのだろう。だが文化財を良好な状態で後世に伝える役目を負っている学芸員は、価値を損なわずにどうやって活用するか常に頭を悩ませている。

県内のベテラン学芸員は「持っている物なら見せたらいいだろうと思われがちですが、一点一点を研究によって体系的に位置付けた上で、保存のルールに従って初めて展示できるのです。でなければただの見せ物で終わってしまいます」と話す。

もちろん県内の博物館や美術館は見せるための工夫も凝らしている。頭はかなり柔らかいとみた。話が面白くてテレビ映りがよくて、「ブラタモリ」に出したい学芸員が何人もいる。


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卓上四季 4/18

美術館や博物館で黒っぽい服を着て、部屋の片隅に立っている。時には来場者の質問にも応じてくれる。てっきり学芸員かと思っていたが、そのほとんどは監視員という別な職種だとか。オノユウリさんの漫画「美術館で働くということ」を読むと、学芸員の仕事の一端が分かる。

美術館では企画展を開く責任者となるが、交渉や予算確保も含めると5年かかるのはざら。高齢の作家に出展依頼状を書こうと、毛筆検定1級を取得した人もいる。

文化財保護も同様のようだ。展示品の保存状況を点検する地道な作業がある。どちらかといえば学芸員は文化財を守り、入場者がその価値を理解するのを助ける裏方に見えるのだが。

そんな実態をお分かりの上での発言だろうか。山本地方創生担当相が海外からの観光客誘致に絡め、「一番のがんは文化学芸員。普通の観光マインドが全くない。この連中を一掃しないと」と述べた。

中、高校時代にブラスバンド部に籍を置き、美術にも精通していると自負する人の言葉と思えない。観光客へのもてなし改善を求めるのなら、施設全体に注文を付けるのが筋だ。がん患者にも失礼だろう。聞いている方からすれば、患ったら社会から一掃される存在になるかのようにも取れる。

それにしても、今村復興相に続く閣僚の言葉の軽さにはあきれる。謝罪し、発言を撤回したところで、果たして本音はどうなのか。
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