はたはたのうた

教育出版 5年

はたはたのうた  室生犀星

はたはたといふさかな、
うすべにいろのはたはた、
はたはたがとれる日は
はたはた雲といふ雲があらはれる。
はたはたやいてたべるのは
北国のこどものごちそうなり。
はたはたみれば
母をおもふも
冬のならひなり。

………………………………………………………………………………

発問100
 
    教材文を100回音読し,全ての語を辞書で引き,発問を考えた。
 
A 語 意
1 はたはたとはどんな魚ですか。
2 うすべにいろとはどんな色ですか。
3「はたはたがとれる日」は次の意味のどちらですか。(a)
  aはたはたが大漁になる(ような)日  bはたはたが大漁になった日
4「たべるのは」の「の」は次のどれと同じですか。(b) 
  aこのえんぴつはだれのですか。  b話すのは好きだ。
5「はたはたみれば」とは次のどの意味ですか。(b)
  aもしも はたはたを見るとしたら  bはたはたを見るといつも
6 はたはたは、一本釣りでとる魚でしょうか。定置網でとる魚でしょうか。(定置網漁)
7 はたはたは、どこに住んでいる魚ですか。(北太平洋~東北地方・日本海)
8 はたはたは、どこでとれますか。(秋田・山形・兵庫)
9 はたはたの代表的な料理は何だと思いますか。(しょっつる鍋・はたはた寿司)
10 はたはたは、鱗がありますか。(ありません。)
11 はたはたは、地方によっていろいろな呼び方があります。
  どんな呼び方があるでしょう。(カミナリウオ・カッタハ・オキアジ・シロハタ)
12 はたはたの旬の季節はいつですか。(冬)
13 はたはたの体長は約何十㎝だと思いますか。(約20㎝)
14 はたはたは一度に何匹くらいとれますか。(数百匹~数千匹?)
15 はたはた雲があらわれるのは、一日のうちいつ頃ですか。(?)
16 はたはた雲は分厚い雲ですか。薄い雲ですか。普通の雲ですか。(?)
17 日本の北国といえば、何地方ですか。(北海道・東北地方)
18 「ごちそう」とはどんなものですか。(普段食べられない豪華な食事)
19 ごちそうを漢字にするとどんな漢字になりますか。(御馳走)
20 「馳走」とは「あっちこっち走り回る」という意味です。
  何のためにあっちこっち走り回るのですか。(お客様のもてなしの準備のため)
21 「はたはた」を漢字にするとどんな漢字になりますか。(鰰・燭魚・ )
22 「はたはた」と呼ばれる昆虫がいます。何でしょう。(バッタ)
23 「たべる」というのはある言葉の丁寧語です。ある言葉とは何ですか。(食う)
24 「おもふ」とはどういう意味ですか。
  (外界から受けた刺激がもとになって何らかの感覚が生じたり情意を抱いたり
   したことを意識する、という意味)
25 「ならひ」とはどういう意味ですか。(習慣)
26 何が「冬のならひ」なのですか。(「はたはた見れば母をおもふ」こと)
27 「母をおもふは」と「母をおもふも」とはどう違いますか。
  (「は」だと「冬のならひ」 が「母をおもふ」ことだけになる。)
28「母をおもふも」の最後の「も」は何を表していますか。
  (同じような事柄がまだある こと)
29 「冬のならひ」は「母をおもふ」ことの他にもう一つあります。何ですか。
  (はたはたやいてたべるの)
30 「冬」とは何月から何月までですか。(12月から2月まで)
31 「あらはれる」と「現れる」では、どう違いますか。
32 「おもふ」と「思ふ」では、どう違いますか。
33 「ならひ」と「習い」では、どう違いますか。
34 はたはたが捕れるのは太平洋側ですか。日本海側ですか。(日本海側)
35 はたはた雲は、はたはたをとる前からあらわれるのですか。
  とったあとで現れるのですか。
36 いわし雲を調べなさい。いわし雲はどんなときにあらわれますか。
  (鰯の取れる夏・秋の夕方近くにあらわれる)
37 「はたはた」と「はたはたというさかな」とではどう違いますか。
38 「冬」という言葉から連想する情景は何ですか。
39 「~なり」とはどういう意味ですか。
  (ある状態について、それが存在するという判断を表す。)
 
B 形 式
1 読点はいくつありますか。(2つ)
2 句点はいくつありますか。(3つ)
3 この詩を二つに分けると、どこで分かれますか。
  (2行目と3行目の間、4行目と5行目の間、6行目と7行目の間)
4 2行目と3行目の間で分けた場合、前半と後半の違いは何ですか。
  (前半は話者が実際に見ているもの。後半は思い出しているもの。)
5 4行目と5行目の間で分けた場合、前半と後半の違いは何ですか。
  (前半ははたはたについての説明。後半ははたはたへの自分の思い。)
6 6行目と7行目で分けた場合、前半と後半の違いは何ですか。
  (前半ははたはたが主になっている。後半は母が主になっている。)
7 体言止めになっているのは、何行目ですか。(1行目と2行目)
8 読点は2か所にしかついていません。ここにだけ読点がついているのは何故ですか。
  (毎冬、はたはたを見る度に話者は子供の頃を思い出す。
   今目の前に見ているはたはたについて書いてある部分に読点がついている。)
9 文にするといくつの文がありますか。(3つ)
10 「、」がついているのとないのとではどう違いますか。
11 この詩は何行の詩ですか。(9行)
12 9行の中で、もし削るとしたら何行目ですか。(どの行も削られない)
13 詩を3つに分けるとしたら、どことどこで分けますか。
14 そこで分けた理由は何ですか。
 
C 設 定
1 題名は何ですか。(はたはたのうた)
2 作者は誰ですか。(室生犀星)
3 何連の詩ですか。(1連)
4 何行の詩ですか。(9行)
5 話者は子供ですか。大人ですか。(大人)
6 話者は今、どこにいますか。(故郷ではない所)
7 話者に見えているものは何ですか。(はたはた・はたはた雲・ごちそう・母)
8 話者が今、実際に見ているものは何ですか。(はたはた)
9 話者が思いだしているのは何行目から何行目までですか。(3行目から最後の行まで)
10 この詩を読むと何が見えてきますか。
  (はたはた・薄紅色・はたはた雲・はたはたを焼いている所・北国の子供・母・冬)
11 今、話者は母のそばにいるのですか。(母のそばにいない。)
12 4行目の主語は何ですか。(はたはた雲)
13 「母をおもふ」のは誰ですか。(話者)
14 「はたはたやいてたべる」のは誰ですか。(北国の子供)
15 はたはたを焼くのは誰ですか。(母)
16 季節はいつですか。(冬)
17 はたはたについて分かることはいくつ書いてありますか。(5つ)
18 はたはた雲が現れる時季はいつですか。(冬)
 
D 工 夫(レトリック)
・対比
1 対比されている言葉はどれとどれですか。(母と北国のこども 母とはたはた)
2 どういう点で対比されているのですか。(親と子)
3 似ている言葉はどれとどれですか。(はたはたとはたはた雲)
4 対比している色は何色と何色ですか。(薄紅色と白)
・色
1 何色が見えますか。(薄紅色・白・青)
2 うすべにいろとはどんな色ですか。(紫がかった薄い赤色)
3 雲はどんな色ですか。(白・灰色・薄紅色)
4 この詩の中で薄紅色なのは何ですか。(はたはた・母・はたはた雲)
5 薄紅色からイメージするのは冷たい感じですか。温かい感じですか。(温かい感じ)
6 はたはたは薄紅色の部分が多いのでしょうか。銀色の部分の方が多いでしょうか。
  (銀色の部分の方が多い。)
7 はたはたが一番薄紅色になるのは、はたはたがどんな状態の時ですか。(産卵期)
・反復
1 繰り返して使われている言葉はどれですか。(はたはた)
2 「はたはた」という言葉は題名を入れると何回出てきますか。(7回)
3 「はたはた」を繰り返すとどんな効果がありますか。
  (はたはたが強調される・歌の節のようなリズムが生まれる)
4 7回出てくる「はたはた」のうち一つだけ違うものがあります。どれですか。
  (はたはた雲)
 
E 心情・思考
1 「はたはたみれば母をおもふ」のは何故ですか。
  (子供の頃、母に焼いてもらって嬉し かったから。)
2 「今日のはたはたが食べられるかな。」と思うのはどんな時ですか。
  (はたはた雲を見た 時)
3 銀色の部分が多いはたはたなのに、何故「うすべにいろのはたはた」と話者は言って いるのですか。
  (はたはたの薄紅色の部分が印象に残っているから。温かい思い出になっているから。)
4 はたはたは焼くとおいしいのですか。(おいしい)
5 はたはた雲を見て話者が先ず思うのは何ですか。(ごちそう・母)
6 はたはたを焼いて食べている時、外は温かいのですか。寒いのですか。(寒い)
7 この詩を絵に表します。どんな絵になりますか。
8 この詩の紙芝居をつくるとします。絵は最低何枚必要ですか。(4枚)
9 紙芝居の絵はどういう絵になりましたか。説明を書きなさい。
 
 
F 主 題
1 キーワードを3つあげなさい。(母・はたはた・冬)
2 この詩で一番大切な言葉は何ですか。(母)
3 この詩で一番言いたいことは何ですか。
  (はたはたを見ると母を懐かしく思い出すこと)
4 「はたはたのうた」という題は何を表していますか。
  (はたはたを見て母を思う心を表 した歌)
5 話者が「おもふ」母の表情は笑顔でしょうか。寂しそうな顔でしょうか。(笑顔)
6 詩を大きく2つに分ける部分は、その詩の主題を表していることが多いものです。
  この詩の主題はなんでしょう。

………………………………………………………………………………

    教材分析


  はじめに全文の音読をします。微音読で繰り返し音読をさせます。
  次に読んだ感想を発表します。様子や気持ちで、感じたこと、分かって
きたこと、思ったこと、浮かんできたこと、そして分からないことなどを発
表させます。事前にそれらについての書き込みをしてもよいでしょう。
  自由に発表させます。教師は話し合いの柱の大体の見当をつけておきま
しょう。どんなことを話し合えばよいか、その内容や柱の見当を持って授業
に臨みましょう。
  下記のようなことが話し合われるでしょう。


(1)古いことばづかい・古い言い方がある
  旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)があります。「いふ」「あらはれる」
「おもふ」「ならひ」がそれです。現代仮名遣いでは「いう」「あらわれ
る」「おもう」「ならい」という表記になることを確認します。
  現代かなづかいになったのは、昭和21年11月からです。それ以前は
旧かなづかいでした。


(2)題名について
  題名は「はたはたのうた」です。ここでは「はたはた」と「うた」につ
いて確認しておくことが必要です。
  子ども達は「はたはた」についてどれぐらいの知識を持っているでしょ
うか。実際に食べた経験があるでしょうか。「はたはた」の魚を知らないこ
とには、この詩の学習が始まりません。魚屋さんで売っていればしめたもの
です。一匹だけでも実物を児童に示してやれば、この詩の理解が容易になり
ます。現在、ウェブサイトでも「はたはた」で検索すれば「はたはた」のカ
ラー写真入りの記事があります。学校図書館から探した図鑑資料を見せるの
もよいでしょう。
  「はたはたのうた」の「うた」についても話し合う必要があります。国
語辞書で「うた」を引くと「歌。唄。詩」の漢字が当てて書いてあります。
ひらがな書きの「うた」には、大体は三つの意味内容があるようです。
  「歌」は「歌を歌う」の「歌」です。
  「唄」は「こもり唄」や「わらべ唄」などとして使われますが、「歌を
歌う」の「歌」と大体が似た使われ方をすることもあります。
  「詩」と漢字で書いて「うた」と読ませる場合もあります。古代の和
歌、旋頭歌、長歌、歌謡、それから近代の短歌、近代詩などを総称して
「うた」と呼ぶことがあります。「詩」と書いて「うた」と振り仮名をつけ
ている活字も目にします。


(3)「はたはた」についての知識
  広辞苑(岩波書店)より
  ハタハタ科の海産の硬骨魚。口は大きく体には鱗がない。背部は黄白色
で、褐色の流紋がる。体長15センチメートル内外。北日本のやや深海に産
し、11月から12月産卵のため沿岸に群遊するときに漁獲。その季節によ
く雷鳴があるので、この名があり、カミナリウオともいう。「しょっつるな
べ」の材料とし、また卵は「ぶりこ」と呼ばれ、賞味。

  平凡社百科事典「マイペディア」より
  ハタハタ科の魚。地方名はカタハ、シロハタ、ハタなど。全長22セン
チ。体には鱗がない。北洋~東北地方の太平洋岸、日本海に分布。普通水深
150~400メートルの砂泥底にすむが、初冬の産卵期には水深2メート
ルぐらいの海藻の多い沿岸に来遊。秋田県、山形県の名産だが、山陰地方で
も多量にとれる。煮付け、塩焼き、酒粕漬け、干物などにする。卵は「ぶり
こ」として喜ばれる。


(4)うすべにいろ
  大辞林(三省堂)によると、「べにいろ」で引くと「紅花の花びらから
採った鮮やかな赤い色素。また、その色」とあります。ですから、「うすべ
にいろ」とは「薄い、鮮やかな赤色」ということでしょう。なにはともあれ
「はたはた」の実物を見ることが先決です。


(5)はたはた雲
 「はたはた雲」とは、どんな雲なんでしょうか。いかなる雲のことをさす
のでしょうか。
  上記した菅原徳蔵氏のHP「初冬ハタハタ来たどぉー男鹿市北浦」に
は、以下ような記事が書いてあります。「はたはた雲」に関係がある記事を
荒木が太字にしています。以下の引用文を読むと、「はたはた雲」とはの結
論として次のことが分かります。
(イ)「はたはた」を漢字で「魚へん」に「雷」または「魚へん」に「神」
   と書く、そのわけ。「はたはた」の名前の由来が分かります。
(ロ)初冬、鉛色の空に雷鳴がとどろき、みぞれ混じりの寒風が吹き荒れる
   頃、大波にのってハタハタの大群がおしよせてくる。「初冬、鉛色の
   空と雷鳴」これが「はたはた雲」だと分かります。「はたはた雲」と
は「初冬、はたはた漁を告知する雷雲、積乱雲」のことだと分かります。

ーーーーー引用開始ーーーーー
  11月下旬~12月、鉛色の空に雷鳴がとどろき、みぞれ混じりの寒風
が吹き荒れる頃、大波に乗ってハタハタの大群が産卵に寄って来る。今
年の北浦漁港では、12月1日夜に先発隊、12月4日夕方には本隊が接岸。シケ
の日が多かったが、季節ハタハタ漁は豊漁で、しかも20cmを超える大型が多
かった・・・「木枯らし吹きて 稲妻光る/舟人勇み 躍るハタハタ・・・」
(「男鹿に寄せて」大場直利)・・・

▼鰰・ハタハタ・・・「鰰という魚は、冬の空かき曇り、海の上荒れて荒
れて、なる神などすれば、喜びて、群れけるぞ。しかるゆえにや、世に、は
たはた神とう・・・文字の姿も魚と神とは並びたり」(菅江真澄記)

  秋田の初冬、雷が鳴る頃にハタハタが産卵のため沿岸に押し寄せる。こ
れを見た人は、ハタハタは「雷の魚」すなわち「はたたがみうお」に違いな
いと考えた。いつの間にか、それが「ハタハタ」になったと言われている。
漢字では、魚へんに神、または雷と表現され、名前の由来の名残をとどめて
いる。

 「ハタハタの町北浦と、言うのは昔のことで今は、ほとんど取れません。
むかしは、ハタハタがありあまるほど取れて、1箱50円とかだったそうで
す。ハタハタは、カミナリが鳴るといっぱい取れるという言い伝えがあり
ました。

  ハタハタは、漢字で「鰰」・・・つまり「神の魚」という意味がある。
かつては、一年間で獲れる魚の半分以上をハタハタが占め、11月中旬から12
月中旬のわずか1ヶ月だけの収入で一年間暮らせた人もいた。だから漁師に
とってハタハタは、神様からの贈り物と考えた。現在は、「年に一度の冬の
ボーナス」みたいなものとも言う。

シケで荒れると大漁になるので無理して、死んだ人たちもおりました。
また37,8年頃には、ワッカでのすくい網も随分使われて、女や子どもでも結
構な漁があり、私もトラックに積んで農村部落へ何度となく売りに出掛け、
ハタハタがないと年越しが出来ないもののようにみんな買ってくれました」
(菊地琴・八森町網元夫人)
ーーーーー引用終了ーーーーーー


 (6)「はたはたのとれる日」
  はたはたは、常時漁獲できるというわけではありません。最近は乱獲の
せいで「はたはた」の生息量が極端に少なくなり、漁獲できる期間や漁獲量
が決まっているようです。漁獲時期についは、最終行の「冬のならい」と関
連づけて話し合う必要があります。

  上記した菅原徳蔵氏のHPの記事が参考になります。「初冬ハタハタ来
たぞぉー男鹿市北浦」と「今年もハタハタ来たどぉー男鹿市北浦」には、次
のような記事が書いてあります。

ーーーーー引用開始ーーーーー
  ハタハタの漁獲量は、昭和38年~昭和50年まで1万トンを越えていた
が、昭和51年以降激減、平成3年には72トンまで落ち込んだ。その原因は、
海の環境の変化、乱獲、産卵する藻場の減少の三つ。平成4年、漁業者は3年
間の自主禁漁に踏切った。さらに、産卵場の造成、漁網を利用した増殖、種
苗放流など、「育てる漁業」に大転換した。

 3年間の禁漁が明けた平成7年以降、漁業者間の自主協定として漁獲枠を
設定。「獲りながら増やす」には、「資源量の5割」が上限というもの。そ
のかいあって、漁獲量は着実に増加。2003年には、2,969トンで、対前年比
40.6%増。生産額は、11億2,600万円で全国一に返り咲いた。まさに「ハタハ
タの本場復活」と言える。

 ーーーーー引用終了ーーーーー


(7)「北国のこどものごちそうなり」
  「北国」とは、通常は北海道、東北地方をさしますが、室生犀星は子ど
も時代は金沢市で過ごしていますので、ここでの「北国」とは北陸地方まで
含めて「北国」といっていると考えるべきでしょう。
  「子どものごちそうなり」にはどんな意味内容が含まれているでしょう
か。学級児童たちに「子どものごちそう」はどんな食品なのでしょうか、と
問いかけてみましょう。
  「ごちそう」の言葉にある語感には普段の、いつも食べている料理物で
はなくて、「豪華な食べ物。普段では食べない、上等な高価な食べ物」とい
う意味内容が含まれています。「はたはた」はそんな食べ物だったと言うこ
とが分かります。


(8)「はたはたみれば母をおもふ」
  語り手(室生犀星と考えてもよい)は、子ども時代に母がはたはたを焼
いて食べさせてくれたことを思い出し、さらに子ども時代の母についてあれ
これと思い出しているのでしょう。子ども時代の母をあれこれと回想し、な
つかしく思い、故郷の郷愁にひたっているのでしょう。
  室生犀星と母親との関係についてはいろいろ書くことがありますが、犀
星の個人的情報を知らなくても、この詩だけで十分に鑑賞できる詩だと思い
ます。また、そうでなければならないと思います。つまり、語り手を犀星と
直結させないで、広義の語り手としてこの詩を解釈してよいでしょう。
  室生犀星と母との個人的情報をちょっとだけ書いてみよう。
  犀星は父(64歳)と、その家の女中(33歳)との間に生まれた私生
児です。出生して七日後、まだ命名もしないうちに実母(女中)から離され、
他家に貰い子として預けられました。実母(女中)は失踪し、犀星は実母の
顔も、名前も知らないで死んでいったと言われています。このことは犀星の
生涯に大きな影響を与えました。実母への屈折した切ない慕情と愛着、つき
とめようのない非難、捻じ曲げられた歪んだ実母へ思慕の情が生まれ、詩心
にも大きく影響を与えています。


(9)「冬のならひ」
  「ならい」は「習い事」とか「習い物」とかの「習い」です。国語辞書
で「ならい」を引くと「慣。習い。倣い」の漢字が当てられています。ここ
での「ならい」は「しきたり。習慣。風習」というような意味内容でしょ
う。「はたはた」の「冬のならい」は、今ではなつかしい思い出、郷愁、追
憶となって書かれています。


  音声表現のしかた


  前半は、語り手が、はたはたという魚について説明して、語って聞かせ
ています。誰かに語って聞かせているつもりで音声表現していくとよいで
しょう。

  一行目の「はたはたといふさかな」を、ゆっくりと音声表現して、「は
たはた」という魚の話題提示をするつもりで、聞かせるように「はたはた」
を目立たせて音声表現していくとよいでしょう。

  二行目の「うすべにいろの・はたはた」の「うすべにいろの」を強く高
く目立たせて読んで、強調して音声表現するとよいでしょう。

  三行目と四行目とは、文意ではひとつながりになっています。ひとつな
がりの意識で音声表現していきます。「はたはたがとれる日は / はたはた
雲 / といふ・雲が / あ・ら・は・れ・る //」のような区切りとテンポで
音声表現してみるのも一つの読み方でしょう。

  五行目と六行目とは、文意ではひとつながりです。ひとつながりに意識
で音声表現していきましょう。「はたはた・やいて・たべるのは / 北国の
・こどもの・ごちそう・なり //」と区切って、全体を北国の子どものご馳
走であることを知らせるつもりで音声表現するとよいでしょう。

  7行目、8行目、9行目は、文意ではひとつながりです。「はたはた・
みれば / 母を・お・も・ふ・も / 冬の・な・ら・ひ・な・り /」と区切っ
て、子ども時代を思い出し、母のことを思い出して語っているように音声表
現していきます。そうした郷愁にひたっている感慨深さの感情が音声に表現
できたらすばらしいです。

  子ども時代にはたはたを食べたこと、子ども時代そうした生活習慣や風
習があったことを思い出し、子ども時代の出来事をなつかしく思い出してい
ます。なつかしい思い出に感慨深くひたっている気持ちになって音声表現し
ていくようにします。

………………………………………………………………………………
関連記事