みんなの目

中日春秋 4/15

<父の目をかりたら/どんなけしきに見えるだろう/母の目をかりてドラマを見たら/すぐになみだをだすだろう…>

これは、先月出版された詩集『ことばのしっぽ』(中央公論新社)に収められた小学校五年生の女の子の作品「みんなの目」だ。詩は、こう続く。<…兄の目をかりて/野球のしあいを見たら/とてもたのしくなるだろう/妹の目をかりたら/どこでもすぐにねられるだろう>

今、この人の目をかりてみたら、どんなけしきが見えるだろうか。千葉県松戸市の小学校に通っていた九つの娘を殺されたレェ・アイン・ハオさんだ。

仕事でベトナムから日本に来ていたハオさんは、まな娘をニャット・リンと名付けた。ベトナム語でニャットは日本、リンは輝きという意味だという。

しかし、「日本で輝かしい生活を」というハオさんの思いは突然、断ち切られた。きのう死体遺棄の疑いで逮捕されたのは、子どもたちの安全を見守る目を持つはずの保護者会長だというから、あまりにもやりきれぬ事件の展開だ。

父母の目、きょうだいの目、友だちの目、あるいは、ほかの国の人々の目…。人が成長するということは、「自分の目」だけでなく、「みんなの目」で世界を見ようとすることを、覚えていくことかもしれぬ。リンさんの命を奪ったのは、そういう大切な「みんなの目」をなくしてしまった人間だろう。

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 読売新聞くらし面「こどもの詩」コーナーが今年50年を迎えたのを機に、作品集「ことばのしっぽ 『こどもの詩』50周年精選集」(中央公論新社、読売新聞生活部監修、1400円税抜き)=写真=が出版された。


 「こどもの詩」は1967年5月にスタート。子どもならではの視点や大人の意表をつく描写が、読者の心を捉えてきた。精選集では約200編を収録。「あたしのくみにね/おとうさんから/うまれたこが/いるんだよ!」(「おとうさん似」1989年)、「お気に入りの/ふくがあります/大人になっても/きられるように/のばしておきました」(「お気に入り」2015年)など、はじけるような感性に満ちている。

 歴代選者は日本を代表する詩人が務めてきた。初代は山本和夫さん。次の川崎洋さん以降、短評がつくようになった。子どもと一緒に楽しんでいるような川崎さん、哲学的な雰囲気の長田弘さん、優しさとユーモアあふれる現在の平田俊子さんと、選者の個性も味わえる。

 平田さんは「50年という長期の子どもたちの詩を見渡せる貴重なアンソロジー。命の輝きのような言葉に触れていただければ」と話している。

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北斗星 4/7

 全国紙の家庭面で半世紀にわたって続く「こどもの詩」コーナーから200編余りをえりすぐった本「ことばのしっぽ」(読売新聞生活部監修、中央公論新社)に、「四という字」と題した1編がある。

「四はみんなきらう/四は死につながるからと/でもぼくはちがう/しんぼう、しれん、幸せと/思っている/ぼくは四年四組四番です」。秋田の小学4年男子が書いた詩だ。1996年5月10日付の紙面に載った。

クラス分けで4年4組になったんだね。おまけに出席番号が4番とは。なんか嫌だなあと思ってしまいそうだが、この子は「し」で始まる言葉を三つ見つけて気を取り直している。前向きの姿勢がいいなあ。

先生たちは年度末になると児童一人一人の名前を書いたカードを持ち寄り、翌年度の学級編成を決める。勉強や運動能力、住んでいる地区、友だち関係までを考え、学級ごとに大きな差が出ないように割り振っていく。とても気を使うという

ところが「この学級はちょっとバランスが悪いかな、と思っても新学期が始まってみると意外に不足部分を補い合うようになるものです」とOB教諭が教えてくれた。例えば、足の速い子がいなかったとしても、それを発奮材料にしてリレーで頑張るのだ。

1学年1学級という学校もあるけれど、新しいクラスメートは先生たちが考え抜いて選んでくれた仲間です。仲間がいれば辛抱できるし、試練にも耐えられます。幸せな学校生活となるよう祈ります。

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透視図 4/5

 日本の霊長類研究の第一人者で京大総長も務める山極寿一氏は少年時代、児童文学『ドリトル先生』(ヒュー・ロフティング)シリーズが大好きだったそうだ。『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)に教えられた。

 動物語を自在に操って世界を旅するドリトル先生に憧れていたらしい。いつの日か自分も「アフリカに行って動物たちと話をしたい」と考え、探検家になることを夢見ていたという。山極氏のように、子どものころの夢をそのまま実現させられる幸運な人はあまりいない。ただ振り返ってみて、夢が人生を航海していく上で羅針盤の役目を果たしてくれた、と感じている人もまた少なくないのでないか。

 さてことしの新1年生はどんな夢を持っているだろう。あす、本道の多くの公立小学校で入学式が行われる。第一生命が1月に発表した児童の「なりたいもの」調査では1位が男子でサッカー選手、女子で食べ物屋さんだったとのこと。とはいえ、職業だけが夢の全てではない。そもそもまだ夢などなくても一向に困らない。読売新聞家庭面の「こどもの詩」精選集『ことばのしっぽ』(中央公論新社)にこんな詩があった。吉田駿君(小1)作「はっけん!」である。「おひめさま めをぬいたら おひさま/ありんこ りをぬいたら あんこ/にんじん んをぬいたら にじ!/わぉ!」。

 「にんじん」が「にじ」に変わるのを発見し、おまけに心でその虹を見て歓声を上げるなんて畏れ入った。子どもは夢を考える天才である。大人が余計な邪魔をしない限り。

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