米語

談話室 4/12

日本学士院前院長で国立がん研究センター名誉総長の杉村隆さんが東大医学部を卒業した戦後間もない頃。放射線科の教官の傍ら「米語」の会話学校に通ったが、学期の進級に落第した。特別試験を受けるもまた落第。

患者を抱え、実験の都合もあり、欠席が多かった。落第は1人だけ。「殊の外、恥じ入って退学した」。その後、米国立がん研究所に留学した。だが、米国人同士の会話は「何を話しているかも判(わか)らない」。皆が一斉に笑えば、無理に笑顔を作った(「がん研究と英語」)。

文部科学省は公立中高生の英語教育実施状況調査の結果を公表した。昨年度は、英検で「高校中級」の準2級程度以上は高3生の36.4%で、「中学卒業」の3級程度以上は中3生の36.1%。東京五輪を見据え、本年度50%達成の目標だが、どうやら実現は難しい情勢だ。

留学中に日本人研究者らの講演を聴いて杉村氏は開眼した。米国人は英語の巧拙に因(よ)らず「独創性の高い研究」を熱心に聴く。「英語のレベルはある程度以上なら問題ない」「専門の発がんの研究に精を出した方がいい」。氏の体験談は海外へと雄飛する人材の背中を押す。
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