空爆

中日春秋 4/6

その部屋にいる子供たちは寒さで震え、汚れた顔には幾筋もの涙の痕がついていた。シリア内戦で廃虚となったアレッポ。砲弾が落ちる音が響き、電気もガスも水道も止まった部屋で母親はこうつぶやく。

「夜に子供たちが目を覚ますと、一杯の水を欲しがります。でも子供たちにはあげられません」「子供が夜に目を覚ましてトイレに行きたがっても、行かれません。子供が夜に目を覚まして、爆弾の音を止めてと頼んできても、それもできません」。

米国生まれのジャーナリスト、ジャニーン・ディ・ジョヴァンニさんによる迫真のルポ『シリアからの叫び』(亜紀書房)が描き出す内戦の日常だ。

そんな恐怖の夜が明ける日は来るのか。シリア北西部のイドリブ県の人々が、化学兵器を使ったとみられる空爆に襲われたのは、火曜日の夜明けごろのことだったという。

死者は八十人余とも百人以上ともされる。犠牲者の中には、二十人もの子供が含まれるとの情報もある。呼吸困難などに苦しむ人たちが運び込まれた病院が数時間後に空爆されたという、耳を疑うような報道もある。

英国の作家H・G・ウェルズの近未来小説『来るべき世界』に、こういう一節がある。<私たちが戦争を終わらせねば、戦争が私たちを終わらせることになる>。シリアでは、この言葉の不気味な響きが、爆撃の音とともに高まっているのだ。


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内容紹介

目覚めると町は戦場になっていた

女性ジャーナリストが内戦初期のシリアに生きる人々を取材。砲弾やスナイパーや拷問の恐怖の下で暮らし、子供を育てるとはどういうことか。戦争とは、一体なんなのか。危険のただなかで語り出される、緊迫のルポルタージュ。


想田和弘氏(映画作家)推薦!
著者はシリアに入り、一般市民の目線でその恐るべき実態を描写する。彼女自身命がけ。よくもこんな取材ができたものだと圧倒される。本書はシリア人と著者の血で綴られた貴重な「歴史書」であり、平和な国の住民にとっては不吉な「予言の書」である。

全米各紙で絶賛!
ノーベル賞作家アレクシエーヴィチを彷彿とさせる。灼けつくような、必読の書。
                  ―ミチコ・カクタニ(「ニューヨーク・タイムズ」書評)

必読。抽象的政治的な観点からではなく、あくまで人間に寄り添って描かれた、シリアの革命と内戦のルポ。            ―ロビン・ヤシン・カッサブ(「ガーディアン」書評)

2016年刊行と同時に、「パブリッシャーズ・ウィークリー」「ブックリスト」「カーカス・レビュー」「フィナンシャル・タイムズ」ほか全米で書評多数。


【目次】
まえがき
第1章 ダマスカス 2012年6月28日 木曜日
第2章 ラタキア 2012年6月14日 木曜日
第3章 マアルーラとダマスカス 2012年6月−12月
第4章 ホムス 2012年3月8日 木曜日
第5章 ダーライヤー 2012年8月25日 土曜日
第6章 ザバダニ 2012年9月8日 土曜日
第7章 ホムス バブ・アル=セバー通り 2012年10月14日 日曜日
第8章 アレッポ 2012年12月16日 日曜日
終 章 戦争は終わらない 2015年3月
訳者あとがき 
シリア年表
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