あめのうた

東京書籍 2年


  あめのうた   鶴見 正夫


あめは ひとりじゃ うたえない、
きっと だれかと いっしょだよ。
 やねと いっしょに やねのうた
 つちと いっしょに つちのうた
 かわと いっしょに かわのうた
 はなと いっしょに はなのうた。

あめは だれとも なかよしで、
どんな うたでも しってるよ。
 やねで とんとん やねのうた
 つちで ぴちぴち つちのうた
 かわで つんつん かわのうた
 はなで しとしと はなのうた。




 鶴見正夫さんは、1926年生まれで、子どものための詩をたくさん書いています。

 雨が歌うとよくいいますが、雨は決して〈ひとりじゃうたえない〉のです。
雨をうけとめてくれる〈だれか〉がいてこそ、雨ははじめて歌えるのです。
 その〈だれか〉も、決して〈ひとりじゃうたえない〉のです。
 雨が降ってくれるおかげで、雨と〈いっしょに〉歌えるのです。
 そうすると、〈だれか〉の主体性はないのかということになりますが、そうではありません。

 〈やね〉は〈とんとん〉
 〈つち〉は〈ぴちぴち〉
 〈かわ〉は〈つんつん〉
 〈はな〉は〈しとしと〉

と、自分にあった歌を歌うのです。

 〈はな〉が〈とんとん〉とは歌いませんし、〈かわ〉が〈しとしと〉とは歌わないのです。
 雨と〈いっしょに〉歌いながら、自分の条件にあった歌を歌うのです。

 一人で歌う楽しさもあるでしょうが、〈だれか〉といっしょに、〈だれか〉と〈だれか〉とみんなで歌えば、もっと楽しいということをを、子どもたちに感じてとってほしいと思います。
 それをもっと一般的にいうと、一人でやることの楽しみもあるでしょうが、みんなといっしょにやることのほうが、喜びも楽しさも大きくなると考えるほうが、より人間的なのではないでしょうか。

 この詩には、リズムがあります。
 子どものために書かれた詩には、リズミカルな詩がたくさんあります。
 リズミカルな詩が多い詩人は、川崎 洋さん、谷川 俊太郎さんが代表的です。

 西洋の詩は、脚韻といって、文末に、同じ音(おん)のことばを並べて、リズムを感じさせていることが特徴です。
 中国の短い絶句などの漢詩も、脚韻があります。

 日本の詩は、脚韻はありませんが、声喩(音や様子をあらわすことば)がよく使われています。
 声喩は、詩にかぎらず、日本語の独特のことばです。

 声喩は、イメージであらわす文芸である詩に、ほんとにピッタリなものだと思います。
 そして、声喩をくりかえし使うことで、詩にリズムが生まれます。

 「あめのうた」は、声喩のくりかえしのリズムの、代表的な詩です。
関連記事