思い切り働く

水や空 4/5

 (1)真剣な表情を浮かべる(2)眉間にシワをできるだけ寄せる(3)腕を組んでうなる。「考えるふり」のポーズを『サラリーマン生態図鑑』(大和書房)が教えている。自虐的笑いを含みつつ、勤め人の"悲しいおきて"を分析した1冊。

例えば退社のタイミングについても事細かい。定時になると「ただならぬ空気がカイシャに充満」し、上司の「ジャ・オサキ」の声でようやく空気が緩んで帰宅が始まる-とある。

不文律のおきて、空気の類いは不用意に触りにくいが、もはや「当たり障りなく」とはいくまい。新年度のトップ訓辞で、異動の辞令交付式で、「働き方改革」の決意があれこれ示されたことだろう。

政府の実行計画では、残業時間の上限は原則「月45時間、年360時間」で、違反したら罰則という。「ジャ・オサキ」の声を待っていても、らちが明かない。

新社会人を迎えるこの季節、利口そうな「考えるふり」も、空気を読むのもひとまず置いて、たまには前のめりにやってみては-と余計な一言がつい浮かぶ。「ただただ働き続ける」ことと「思いきり働く」ことと。この違いに目を凝らす時なのだろう。

〈「何かやりたい」と「何かやる」はぜんぜん、ちがう〉。行動しないと何も始まらない、と。25年前の都銀の広告コピーだが、古びてはいまい。

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サラリーマンという生物の生態を解き明かした秀逸の本。

生息数が多く身近な生き物ではあるが、彼らは比較的新しい種であり、解明できていないところも多い。行動や習性は合理性に欠くところも多く、未だ謎の多いサラリーマンの生態をここまで明らかにできた観察者に敬意を表したい。

・・・というのは半分冗談で、しかし本書の内容はいたって真面目“ぶった”もので、そこがまた面白い。


サラリーマンの嗜好(なぜ黒い液体をよく飲むのか)や、休日の過ごし方、よくとるポーズ(お会計や、ちょっと通りますよ等のジェスチャー)などを紹介。

個人的にはもう少し文字量が多いほうが好みだが、価格分以上の面白さは味わえると思う。
何か面白い本を探していると言う人にはお勧めだ。


上記とほぼ同じ文章を載せたアマゾンレビューでは、★を4つにした。
自分なりの基準があり4つにしたわけだが、5つでもよかったかもしれない。

いや、面白さだけでいえば間違いなく5つ星だ。


それにしても、サラリーマンというのはなかなか不思議な生き物だ(私自身サラリーマンの範疇に入る)。先ほどのブログ記事でも触れたが、特にこのスーツとやら。なんで前がこんなに開いているんだよ。

クールビズの浸透でノーネクタイが冬でも増えたある日、先輩後輩らしき2人連れのサラリーマンの、こんな会話を耳にした。


「いや~寒いっすね。先輩、ネクタイしないんですか?」
「しないよ?」
「まじっすか!?ネクタイしないと寒くないっすか!?」


すでにスーツは日本のフォーマルな礼装にとどまらず、マフラーの役割も果たしているらしい。いっそのこと、冬は大きめの毛糸でできたネクタイでも売ればよかろう。


こういった実用性もなく不思議な服を当たり前のように着こなしているのだから不思議なもので、このような理屈では通らない習性がサラリーマンにはある。自分自身のことも振り返りつつ、そう感じる。みんな一様に、大量に、同じ方向(駅)へ向かっていくスーツ姿の集団。その姿はある意味かなり異様だ。


サラリーマンになった瞬間に、いくつかの思考スイッチが停止する。なんだかなぁと思いつつ、やめることもできない。




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