儀仗服

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くろしお 4/5


 直木賞作家・浅田次郎さんが陸上自衛官だったときの極めつけの失敗談である。来日したさる国賓待遇の某国大統領を「捧げ銃(つつ)」で出迎える儀仗(ぎじょう)隊員のひとりに選抜された。

 公式儀仗は保安中隊(当時)の役目だが、なぜか浅田さんらの連隊にお鉢が回ってきた。専門外でも失敗は許されない。連日、基本教練をおさらいし、銃身を握る音、床尾板(しょうびばん)が地面を打つ音が一致して、ひとつに聞こえるほど練度を上げ準備万全、当日を迎えた。

 現れた某国大統領は体重200キロはあろうかという小錦関のような超巨漢。派手な軍服に満艦飾の勲章を着けた姿に浅田さんらは絶望的なNGをやらかした。全員が笑いをこらえきれなかったのだ(浅田次郎著「勇気凜凜(りんりん)ルリの色」)。

 陸上自衛隊は国賓らを出迎える隊員用の特別儀仗服と演奏服を約半世紀ぶりに刷新する。緑色から紺色にするなどデザインを大幅に変更。今月上旬から使用する。デザイナーのコシノジュンコさんが協力して見栄えばかりでなく通気性やフィット感も向上させた。

 披露された特別儀仗服の記事を読んで思い出したのが浅田さんの著書にあった不謹慎ではあるがユーモラスな話だった。ブハッと噴き出す直前、隊員たちは直立不動で唇を震わせ、涙を流し、銃剣の先は波のごとく揺れさざめいたという。

 居合わせたお偉方も無理からぬことと考えたに違いない。浅田さんらにおとがめはなかった。戦闘が発生している地域への派遣など政府の無理を承知で働く自衛隊である。失笑ものの国会論戦に比べれば愉快で楽しい「捧げ銃」の失敗談だ。

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