手紙

学校図書 5年

       手紙
          鈴木敏史

   ゆうびんやさんが  こない日でも
   あなたに  とどけられる
   手紙はあるのです


   ゆっくり  過ぎる
   雲のかげ
   庭にまいおりる
   たんぽぽの  わた毛
   おなかをすかした
   のらねこの声も
   ごみ集めをしている人の
   ひたいの汗も…


   みんな  手紙なのです
   読もうとさえすれば

…………………………

鈴木敏史は昭和7年(1932年)長野県の生まれです。

彼は成人してから ずうっと 病いとの闘いを余儀なくされていますが、
でも彼は不満や不平を口にすることはありません。
彼の詩はそうした日々のなかでつくられました。

この<手紙>の詩は 彼の先輩や友人によってつくられた「敏史を囲む会」の支援により 昭和49年に自費出版された詩集「星の美しい村」に収録された作品です。自費出版してすぐに大きな反響をよんで翌年には教育出版センターより再版されています。

<手紙>の詩には 美しい自然の織りなす風景のなかに おなかをすかした  のらねこや ひたいに汗をかいてゴミを集めてくださっている人の姿が登場
 してみんな彼のやさしい世界のなかでは とても大切に写っているのです。

彼の作品には かけがえのない自然にたいする畏敬と まわりの人々にたいするかぎりない優しさや温かさがこめられていています。

彼の作品をゆっくりと読んでいると 彼ならではの 研ぎ澄まされた豊かな
感受性とやさしさと思いやりが ジーンとあたたかく伝わってきます。・・・・・
…………………………

      星の美しい村
             鈴木敏史

      星の美しい村でした
      手をさしあげて
      静かに振れば
      星くずが雪のように
      舞い降りてくるかと思われる
      村でした

      いとこに連れられて
      村祭りに行く道すがら
      わたしは何度立ち止まって
      星空を見上げたことでしょう

      祭りから帰る人々が
      時々通り過ぎていきます

      遠い宇宙からやってきて
      またどこかへ
      遠ざかっていくように

      こんばんは こんばんは
      人々は 決まって
      そう挨拶していくのでした
      このわたしにまで

      星の美しい村でした
      星たちが人々の心の中に
      住み着いているかと
      思われる村でした

      たくさんの人々と
      ほのぼのとした光を
      投げ合って
      わたしは次の日
      家へ帰りました
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