危険手当

中日春秋 4/4

「搾取なき社会」をうたった社会主義国家・ソ連を皮肉ったこんなジョークがある。「資本主義と社会主義の違いは?」と問われ、ある人が答えた。「資本主義では、人が人を搾取する。社会主義では、その逆です。」

「労働者の楽園」をうたいながら、働いても、パン一つ買うのにも長い行列。閉塞(へいそく)感に満ちたソ連末期には、こういう言葉が盛んにつぶやかれた。「当局は賃金を払うふりをしている。だから我々は、働くふりをしている。」

何とも皮肉なジョークだが、笑いごとでないのは、福島第一原発での「払ったふり」である。放射線量が高い現場で働く人たちには「危険手当」が支払われる。だがそこで「中間搾取」が横行しているというのだ。

東京電力の社長の弁を額面通り信じれば、作業員は危険手当を日に二万円前後は受け取れるはずだ。しかし、元請け、一次下請け、二次下請け…を経て、実際に作業員の手に渡るのは、数百円から数千円という。

中には、この中間搾取を「事務手数料の徴収」と称する業者もいるそうだが、危険な現場で働く人にきちんと支払わずして、何が「危険手当」か。

「働くふり」など決して許されぬ最前線で汗を流す人々への、「払ったふり」がまかり通る。中間搾取の横行はこれまでも指摘されてきたが、一向に改まらぬのは、東電が「見て見ぬふり」をしているからではないのか。

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